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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


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「マッチポイント」


ウディ・アレンの映画って、好きものもあれば苦手なものもあり、でもどちらかというとインテリ臭さが鼻につき苦手なものが多いかな。
でも、これはすっごく好き。途中、いかにもロンドンって感じのシーンの挿入があったりで、なんだか微笑ましい。あんまり予算かけてなさそうなのも、逆にいいかも。


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これってサスペンスといえばサスペンス。だけど、クラス(階級)をときに皮肉的に扱っているなぁ、というのが私の印象です。
クラスって、それが存在することがいい悪いではないし、それ自体は必ずしも貧富の差ではない。
ええとなんでしたっけ、昔の舞台だか映画だかで、恋愛で苦悩きでるのは上流階級(金持ちだったかな?)だからだ(つまりそれだけ余裕がある。ワーキングクラスは日々の暮らしていっぱいいっぱい)、みたいな台詞があったけれど、確かに、そうかもしれない。
主人公のクリスがノラに惹かれたのは、アッパー(ミドル)クラスにどこかなじめない部分があって、そこをアメリカの田舎娘とはシェアできたからかも、ねぇ。

抽象的だな、と思ったのは、ウエイティングバーを有したレストランで、クリスとクロエ、トムとノラが食事をオーダーするシーン。
ノラはトムと同じ、と言い、クリスはローストチキンを注文するものの、クロエに「そんなのboringよ。キャビアのブリニ添えにしなさいよ。キャビアは嫌いなの?」みたく言われる。
うーん、これはきっついなぁ。クロエはまったく悪気はなく、むしろ親切で言っているんだろうけれど、クリスはこれでも背伸びしてるんだよなぁ。
チキンはイギリスでは本当に安い。とはいえ、ローストチキンだし、レストランメニューだし、それなりのはず。だけど、クロエにしてみれば、レストランに来たのよ、もっとおいしいもの食べましょうよ、ということなんですよね。
「お行儀がいいのね。お父様は厳しかったの?」とクロエ。遠慮していると思っているんだろうけど、クリスは単にレストランでの食事に慣れてないし、キャビアも食べたことない。だから自分なりに頑張ってローストチキンにしたのにねぇ。

で、ふと思い出したのが、私自身の経験。
なにかで、大学の時に奨学金をもらっていて、と言ったら、その場に居合わせた、小学校から私立に通っていた人が「あらっ、おうちの教育がしっかりしていらっしゃるのね」と。
いや〜、単にうちが貧乏なだけなんですけれど。
でも返す言葉を失ったのであります。
そして、ああ、育ちがいいというのはこういうことか〜と妙に納得したのであります。
いい意味ですれてない。クロエも同じですね。
結局、国、クラスなど、育ってきた背景が違うということは、分かり合えないことを前提に分かり合おうとする、のが人と付き合うってことなんじゃないのかな。

そのあと、運も大事だけれど努力も大事というクロエに対し、クリスは運が大事だ、と力説します。
あらかじめ恵まれた立場にいると、もちろんもっともなことではあるのだけれど、きれいごとが言える。それだけ余裕があるから。
でも現実ってそうじゃない。運が大事というのはそういうことなんだよなぁ。

衝撃のラストシーン、みたく言われていたけれど、えっ、そうかな?
むしろ、こういうラストシーン以外、考えられないです。




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・『イギリスの食、イギリスの料理&菓子は“イギリスの食研究家”“食の編集者/ライター/アドバイザー”羽根則子のブログです。

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by ricoricex | 2008-12-19 17:48 | 映画