
旅、に関わらず、訪問先でぶらぶらするのが好きで、でも、ピンポイントでここ!以外は予備知識をできるだけ入れない。予定もみっちり立てない。
ここには行く!ってところも休業日と営業時間と、ざっとした内容、くらいかな。
なんというか、確認作業をするようなことをしたくないんですよ。
そのとき、その瞬間のこうしたい!を最優先して、ぼんやり思っていた予定や予想と違って構わないし。思いがけず、のそれが楽しければいい。そこに期待している部分もあるし。できるだけまっさらな気持ちで新しいことに出合いたい。
もっとも、仕事だと下調べをするから、その反動、かもしれないけれど(下調べをして、いったんまっさらにして、現場に向かう、って感じ、かな)。
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その日は朝から雨で、その予定ではまったくなかったんけれど、とにかく傘をさして歩きたくないなぁ。
で、パッと思い出して、傘要らずのアーケード街の中にあるじゃない!
10年来行きたいな〜、と常に頭にあったところでランチとしましょう。
2011年夏に福岡に移ったときに(今は、また東京)、物理的に近くなったから、
興味を持っていた、シュガーロード(長崎街道)を歩いて調べてみましょう、となりました。
起点は北九州市・小倉。
調べていると、長崎や佐賀のように、江戸時代からの伝統や面影を伝えるお菓子(南蛮菓子)が残っていない。
でも、小倉藩主の小笠原氏は戰、ではなく芸術好き、だったような。。。(私は、歴史に疎い)
とすれば、茶の湯も嗜んでいただろうに、なんでお菓子が残っていないんだろう。
さらに調べていたら、あったんです。
それは「鶴の子」。
喜弔菓子で、予約を受けて作っていて、店頭には置いてないんですね。
ちなみに、商品紹介のウェブサイトではわからないけれど(↓)、
https://www.kogetsudo.com/product/keicho/01.html
見るからに優美なお菓子で、落雁に白餡が入ったものです。
(「石村萬成堂」のマシュマロ菓子「鶴乃子」は別物です)
すぐさま、食べてみたい! と予約を入れました。
(このあたりはこちらのリンクからどうぞ(↓))
https://ricorice.exblog.jp/19701754/
https://ricorice.exblog.jp/19765934/
そして、勝手に、自分の興味が赴くままにこんなことをしていたら、
太陽の地図帖『郷土菓子』でシュガーロードを担当する機会をいただきました(↓)。
https://ricorice.exblog.jp/21338507/
そこで、(正式に?)「湖月堂」に訪問しました。
取材&撮影で指定された場所は、北九州市・小倉の本店。
JR小倉駅から近く、魚町銀天街アーケーの中にあって堂々とした佇まいのお店です。
そして、そのときに初めて知ったんですね、喫茶室もあって、かつ立派だってことを。
確か、このフロアは予約のみで、他のお客さんに気兼ねもいらないから、と3階に通された、ような。。。
当時の正確な様子はわからないのですが、という枕詞はつくものの、「鶴の子」のお話はおもしろかったし、
とても協力的で真摯にご対応くださいました。
肝の話がほぼ終わって、あれこれ話しているときに、喫茶室「喫茶去」(↓)に話がおよび、
これはいいな、次は来なきゃ、と思いつつ、小倉に頻繁に来るわけではないけれど、なまじ駅至近でアクセスしやすいがゆえに後手に回っているうちに、歳月は経ち、
そうして、ようやく。
雨でなかったら行ってなかったと思います。雨でよかった!
10年以上経ってやっと、不義理を解消できた気持ちにもなりました。
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販売スペースの奥も喫茶室になっているのは知りませんでした。いや、説明してもらったかもしれないのですが、記憶から抜け落ちていました。
12時前で、まだ1階に席に余裕があったから、近いところからお通ししましょう、ってことでしょう。
案内されながら、販売スペースの奥にこんな広いスペースがあったんだ、とびっくりしました。
喫茶室は、坪庭の三方を取り囲むようにしてあり、そして、フロアもゆったりなら席もゆったり。


内装や調度品の格子のモチーフの意匠が目を引き、とっさに思い起こされたのが、
イギリス・グラスゴーにあるマッキントッシュゆかりの「ウィロー・ティールーム」(↓)。
上記のブログ記事では、店内の写真をあまり掲載していないのでわかりづらいかもしれませんが、
建築家、マッキントッシュは日本の影響を受けていて、障子などに着想を得たであろう、グリッドで直線的な意匠もあり、「喫茶去」では、それを連想させたんですね。壁の白い飾りなんかもそうだし、椅子のクロスもマッキントッシュのローズを思わせるし。






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注文は、季節なので、おひな御膳を。
酢飯が、酢がキリッとしていて、なんだか懐かしい。子供の頃の家のお寿司(押し寿司)がこんな感じでした。
小皿に盛られたあれこれも楽しい。
お吸い物はふんわりおだやか。
菱餅なんて、何十年ぶりに食べたかも(私はお餅を好んで食べないので)。

そして、見た目も、ですが、量も上品なこれでは食べ足りず(苦笑)、
そもそも甘味処だもんね、を言い訳に、メニューを眺めていたら、ぜんざいがある。
こないだ東京・有楽町の「おかめ」で食べたぜんざいが汁なしで、あっ、そうだった!となったのでした(↓)。
https://ricorice.exblog.jp/30796773/
私が知っているぜんざいはこっち(汁あり)、と確認したくなって、オーダー。
丸みのある甘さでとろんとして(食感、というか、佇まいが)、どん!と主張するタイプでなく、好みですねぇ。
私は通常のメニューで注文しましたが、デザート用に食事とセットにできる半量ほど(とお店の方がおっしゃってました)のものもあります。

周りを見渡してみると、温かい飲み物はポットで提供しているようで(全部ではない)、
そうね、“水商売は水で儲ける”わけだし、まだゆっくりしたいし、何か飲みましょう。
紅茶が2種類、和紅茶が2種類、いずれもティーポットで。
あのですね、紅茶がおいしいお店って、ほんっと少ないんですよ。
私は茶葉でもティーバッグでも、どちらでもよくって、
別段、茶葉だから高級、ティーバッグだからカジュアル、とも思っていません。
ポットの中で対流がどうの、はあるでしょうが、ひとり分、カップ2杯分だと、そこまで気にしなくていいかな〜、なのです。
それよりも、ポットとカップを温め、(基本、水道水の)熱湯を注いで欲しいし、それであればそんな難しくないのでは、と思うのですが、なかなかお目にかかれない。
メニューを眺めていたら、ここは大丈夫!と確信。
迷ったけど、アールグレイにしてみましょう。
アールグレイは配合によって、(味、というよりも)フレイバーが相当異なります。
なんだかんだで、私のアールグレイの基本はジャクソンで、ジャクソンでなくてもイギリスのものが好み。フランスのメーカーとかが作っているものは、香水っぽいというか、華やかさが勝って、あまり好みではなんです。。。
アイスティーやお菓子に使うのにはアールグレイがいいから常備しているものの、ホットの紅茶で飲むことは少ないんですよね、ミルクティーには微妙だし、合わせるものも迷うし。
あっ、これはいい!
アールグレイは香りが立ちすぎず、おだやかなタイプ。
そうよね、そもそも甘味処なので、まずはお菓子や食事ありきですよね。
そして、添えられたミニきんつば。アールグレイがこれによく合う!

アールグレイって合わせるものが定まってなかったんです、私。
オリエンタルな感じもあって、スパイスやドライフルーツをたっぷり使うものの他は、一般的な洋菓子はなかなかむずかしい、というのが私の経験値。なのでフルーツケーキとはには合うものの、それが最適かというと、そこまでではないような。。。
きんつばと合わせる、なんて発想、私にはなかったなぁ。
通常サイズのきんつばって私、途中で飽きちゃうんだけど、この小さいサイズってのもいい。
(後で売店をのぞいたら、100円でお釣りがきて、きんつばっぽいのが3種類ありました)
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スタッフの方はちゃんと人数がいるけれど、オーダー自体はタッチパネル。
お茶やお水など、目が行き届いてるし、物腰もやわらかくって、マニュアル通りではなく、一言二言添えてくれるのも心地いい。
レジで会計をしたときに、印字されたレシートをピシッとのばして渡してくれたのは、感動したなぁ。
そして、ジャズがBGMだったのが音が変わったな、と思ったら電子ピアノの生演奏が入って(懐かしの洋楽系)、うわぁ〜、(今の時代でも)ランチタイムでもこういうのやるのか、と驚きました。

割り箸も長めでいいもの。箸袋も食事と甘味で変えていて、小皿のおかずの爪楊枝も竹のもので、爪楊枝も袋に入っていて、ナプキンもお店のデザインが印刷してあって、菱餅が入った器も素敵で(欲を言うと、黒文字だとよかったなぁ、フォークではなく)。





外食って食事そのものも大事だけど、むしろ、その向こう側や周辺、私はこういうの、食器とかもだし、調度品もだし、季節の花とかもだし、にはお金をかけて欲しいし、生演奏もだし、家では体験できない、そこにお金を払いたいから。
とはいえ、なかなかに厳しい時代。なので、注文を取るのはもはや人でなくていい、簡素化できるところは簡素化して、残すところは残して欲しい、と切に願うのです。

私がお店に入ったのは平日の12時前だったけれど、すでに満席に近く。
でも混んでいていも、追い立てられる感じはまったくしないので、追加で注文をしつつ、長居してしまいました。
グラスゴーの「ウィロー・ティールーム」にしろ、この「喫茶去」にしろ、周囲の人を見渡すと、
観光客もだし、地元の人たちもだし、地元の人がよそから来た人を連れて行くところでもあるんだなぁ。
マッキントッシュがグラスゴーの(ある意味)名士でありシンボルであるように、「湖月堂」も、松本清張が愛した、ってこともあり(今もそういう導入になるの、かな?)、和菓子屋の代名詞的存在でしょう。



