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イギリスの食文化研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


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『イギリス1960年代』


『イギリス1960年代』_e0038047_21155254.jpg

私のための覚え書き。
へぇ〜!と思って購入し、一気に読んだのが数日前。

飛びついたのは、似たような企画を数年前に提出したことがあったから
(いつもの如く、通らなかったけど)。
というのも、音楽オタク、映画オタク、モダン建築好きの私にとって、掘れば掘るほど社会との関連を見せつけられるから。
ピンポイント、ジャンルだけでは到底語れない。
だけど、世の中にはジャンル切りで、それについては深いけれど、社会との関わりについては、私ですら、あれっ?と思うことが少なくない。
あまりに手薄だったり、アメリカやヨーロッパ諸国と混合していたり。

それに、むしろ世の中の動きの中で音楽も映画も建築も生まれたわけで、俯瞰で眺められるものがあってもいいのでは、と思ったのだ。
小さいところを深く、ではなく、大きいところから個々の事象を説明するのが自然なのでは、と。

版元はピンときてなかったし(私が本当にやりたい企画は、ことごとく通らない)、
私とて説得材料らしいものはこしらえてなかった。それを作るのは手間なのはわかっていたし。
ただ、何より私自身が興味を強く抱き、調べて整理したいなぁ、と思っているので、自分のためのテーマとしてきちんと取り組みますか〜、ってのが今の心境。

・・・

労作だと思う。
一般読者でもすらすら読めるように、みたいな記述があったけれど、それは違うと思うよ。
ある程度の知識がないと、この本は読めない。

それは新書というコンパクトなパッケージの限界だろうし(いちいち事細かに説明できない)、
同時に、もう少し広がりがあればもっといいのに、と感じたのも事実。

この時代の小説として『碾臼』が取り上げられて(少しだけだけど)、
確かにその時代に描かれ、その時代を描いたという点ではいいんだけど、
1960年代のイギリス社会の変容を舞台に上手く使ったのは、イアン・マキューアンの『初夜』だと思う。
2007年出版なので、その時代を十分に振り返ることができていて、ごていねいに年号も記されている。数年どころか1年違うだけで社会が違っていることをうまく使った、って感じ。
小説は、旧世代と新世代の違いをうまく描きながら、って内容だし。

そしてブルータリズムと称されるモダン建築への言及も欲しいところ。
生まれた背景などは重要な意味があったはずだから、とりわけ集合住宅などは。
建築集団、アーキグラムも欠かせない。まさに1960年代を駆け抜けたわけだから。

ハビタのオープンは1964年。
マリークワァントについて触れているなら、テレンス・コンラン(マリークワァントの店舗デザインを手がけた、はず)、インテリア&ライフスタイルデザインなども触れたい。

ドラマも『コロネーションストリート』については触れているけれど、『イーストエンダーズ』はなし(こちらは1980年のスタートだけど)。
現地に住んでいなかったら難しいところだけど、テレビ番組にも変化はいろいろあっただろう。

映画も、ケン・ローチに触れているなら『夜空に星があるように』に言及した方がいいだろうし、ゴダールがローリングストーンズを据えてロンドンで撮影した、キューブリックがイギリスに移住した、ってのも重要な意味がある、はず。

ビートルズやマリークワァントについては比較的しっかり言及しているけど、他が弱い。
BIBAはもっと知りたいし、モデルについても触れていいと思う。モデルが服を着る役割だけでなく、キャラクターとして名前を伴うようになった、って意味でも(前の時代は違ったんじゃないかな? 映画女優が担っていたのでは?)
ヘアスタイルでいうとヴィダル・サスーンにも触れておきたい。
ビートルズは革新的だったけれど、ロンドンのシーンも欲しい、ミュージシャンに限らずヴェニュとか。ジャズもまだ活発だったんじゃないのかなぁ。モッズも忘れちゃいけない。
アルバムジャケット・デザインも重きがおかれるようになり、1960年代後半からのヒプノシスの活躍も触れておきたいところ。

「Time Out」の創刊は1968年。
これも雑誌文化を考える上で重要。
メディアとして、テレビも検証しないとなぁ。

あっ、肝心なことを!
1966年、ワールドカップでイングランドが優勝したことも忘れちゃいけない!

1960年代を経て、サッチャー政権へと話が及ぶが、
次の時代へ、であればパンクムーブメントやモンティ・パイソンも触れてよかったのでは。
特にモンティ・パイソンは大事なんじゃないかな。

あと、パブが入り口で階級etcなどで分かれていたとか、
学校(大学とか)とか(フランスはそうよね)、食生活なんかも知りたいところ。
専業主婦が家事を、が変わり始め、エスニック系のテイクアウェイの需要が増えたのもこの時期では? いや、需要があったから提供するようになったのかもしれないし。
『レット・イット・ブリード』(1969年)のアルバムジャケットのケーキはデリア・スミスが手がけ、いかに手軽に簡単に、の家庭料理家の活躍は1970年代に入ってから花開き、長い間不動の人気を誇った。

とりあえず一気に読んだので、ちゃんと書いてあったり、私も思い違いがあったり、はあるにせよ、とにかく次から次へと湧いてきたわけです。
調べて整理するためにも、まずは覚え書きから。

by ricoricex | 2022-12-26 00:00 |