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イギリスの食文化研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


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『コレラの時代の愛』


『コレラの時代の愛』_e0038047_20003296.jpg

『百年の孤独』(↓)がとてつもなくおもしろかったので、次はこれ。


マルケス流“愛の讃歌”の形をとった小説、か。
最終シーンのために、それまでの長い長い物語があった、ような気もする。

荒唐無稽、世の常識、みたいなのを、この世もあの世も自在に行き来する『百年の孤独』とはまた違ったおもしろさ。
ひとりの男性がひとりの女性を50年以上思い続けて、、、
あらすじだけ言うとこうなっちゃうけど、
そこはぐいぐい読ませます。

読み始め、
これは、『林檎の木』と似たテーマで違ったアプローチか、と感じたんですよね。
文庫の清純物語風がそれ物語っていて、メロドラマ的な扱いをされている、気がする『林檎の木』、
私自身は、これは“Mind the Gap”な小説だなぁ、
都会のミドルクラスの男性の傲慢さ
田舎のワーキングクラスの女性の、そこから抜けだせない感じ、
と思っていて、女性の死はともかく、妙なリアリティを感じるんですよね〜。

途中から、これは『情事の終り』を、
宗教を女性に置き換えた感じかもしれない、と思い始め、
『情事の終り』はカトリック、ってのを持ち出すからわけわかんなくなるんだけど、
確かな心の拠り処、みたいなもの、それが宗教だったわけで、
『コレラの時代の愛』の場合は初恋の女性、なのか。

そして、『コレラの時代の愛』でも『情事の終り』でも、
あっ、違う、となってスパッと切る、ってのは、こういうこと、確かにあるよなぁ、ってものすごくリアルですね。

初恋の女性を50年以上慕い続ける『コレラの時代の愛』では、
男性はずっと貞操を守っていたか、というとそうではなく、
622人と関係を、ってのも、リアル、というか。
それとこれとは別、ってことでもなく、埋め合わせるものが欲しかった、でもなく、そのときの自然な成り行き、というか、
あれとも寝たこれとも寝た、と言っていた宇野千代が純粋に思えると一緒、か。

それと、訳もいいんだけど、原文がそうだからそうしているんだけど、過去形が続くのが気になってしまった。。。
日本語の文の場合、たいていは、リズミカルにする理由もあって、現在形や体言止めを入れたりする、ような気がする。

マルケス、次は短編を読んでみたい。

・・・

いつも思うんだけど、小説にしろ何にしろ、登場する女性は美人だったりかわいかったり、多少難はあってもそういう類の人たちよね。
最初はルックスと魅力(色気というかattractiveというか)で気に留めるところから始まる、からそうなっちゃうんだけど、
ぱっと見で圏外に押しやられ存在をなかったことにされる人間ってのもいるわけで(私はまさにそうで)、
力量のある作家がそういう人間をどう描くのかみたいのだけれど、
そもそも眼中にないから、取り上げる、ってことをしないのか、と思ってみたり。。。

となると、その点だけとっても、漫画『自虐の詩』は、ほんとすごいよなぁ。

by ricoricex | 2024-01-15 00:00 |