
『勝手にしやがれ』(1960年/ジャン=リュック・ゴダール監督) @ ヒューマントラストシネマ有楽町(東京)
映画全体の所感はいずれ書き留めるとして、忘れないうちに。
『勝手にしやがれ』のラストシーン。
映画館に行く前にラストシーンのセリフを思い出してたら、30余年前に観たときに調べて
「“最低”ってdégueulasseっていうんだ〜(口語表現、だったと思う)」ってのが蘇った。
で、いざ、そのラストシーン。
順を追うと、
C’est vraiment dégueulasse.
「俺は最低だ」
It’s really disgusting.
Qu’est-ce qu’il a dit?
「彼、なんて言ったの?」
What did he say?
Il a dit ‘Vous êtes vraiment une dégueulasse.‘
「君は最低だ、と」
He said ‘You’re really disgusting.’
Qu’est ce que c'est, dégueulasse?
「最低って何のこと?」
What is ‘dégueulasse’?
「俺は最低だ」「最低って何のこと?」
以外は、軸は合っているものの、ちょっと違ってるかも。
補足のために、英語訳(私流)も加えています。
dégueulasseをdisgustingとするのは、しっくりこないけれど、ほかに適当な言葉が見当たらないので、いちばん近いところで。
私はフランス語はかじった程度で、
ただdégueulasseって言葉を知っていたのと、
ジーン・セバーグの英語訛りと簡単なセリフ、
この前に『気狂いピエロ』を5回観てしまって(私が狂ってるよなぁ)、耳がフランス語に少し慣れたのと、
そもそも字幕があるので、日本語訳からフランス語を推察、
というレベルです。。。
ん?と思ったのが、
C’est vraiment dégueulasse.は直訳するとなると、「まったく最低だ」になり、
「俺は最低だ」ではないんですね。
で、これ、“最低”を“最悪”におきかえた方がすんなり理解できそうで、
「最悪だっ!」と言うとき、って自分自身だったり取り巻く状況だったり、だと思うんです。
このセリフがまさにそうで、
かつ、このシーンの前に、密告されたことを告げられ、その状況を受け入れ、もう疲れた、投獄されてもいい、みたいなことを言ったりしているので、
密告された状況、とはいえ、ジーン・セバーグを責めているわけではない。
フランス語でいうところの、“C'est la/ma vie(人生、そんなもん)”みたいな心境かな、と。
が、それを知らない刑事は、
“最低”は、密告したジーン・セバーグを指していると思っちゃうんですね。
だから、C’est(It’s)が、Vous êtes(You’re)と、“最低”が属する主語が変わる。
これを際立たせるために、あえて訳は、
「まったく最低だ」ではなく、「俺は最低だ」にしたんだろうな〜、と推察するわけです。
で、最後の「最低って何のこと?」。
dégueulasseが口語表現ってこともあり、dégueulasseという言葉そのものを知らず、単純にdégueulasseという言葉の意味を聞いたのかもしれないし、私が最低だなんて、どーゆーこと?という問いかもしれない。
伏線のように、ジーン・セバーグはアメリカからパリに留学中という設定なので、
映画の中で、(教科書にはない)フランス語を聞いたり、文法の間違いを指摘されたりしてるんですよね。
なので、前者なのかな〜、というのが、私の見立て。
なんだろー、せっかく、というべきか、ベルモンドが彼女を責めるようなことをしなかったのに、それを歪曲したかのような刑事解釈の訳、そもそも言葉を理解してない、という流れ。
これぞ、lost in translationじゃん!
それぞれ短いセリフなのに、いやぁ、すごいね、と感心してしまった!
sat 07/05/22

