
つい見入っちゃうんだよね〜。
なので、なるべくすたこら通り過ぎるようにはしてる、んだけど、
そうはなかなかいかなくって、小銭握りしめてレジに向かったりする。
神保町は楽しい。
学生時代から来ていたし、編集プロダクションで働いていたときは、事務所が二度移転したにせよ、私は変わらず神保町駅で乗り降りしていたので、いまだに体にすっかり馴染んでいる。
いつもは、靖国通りでいうと、専大前から駿河台下あたりを南北含めてウロウロしているんだけど、
ときどきもう少し東まで足をのばす。
JR神田駅までの間、地下鉄でいうと小川町駅、淡路町駅界隈は、ただただ歩いているだけでも、静かに心躍る。
靖国通り沿いは、アウトドア(以前はスキー)のショップや楽器店が目立つけれど、ここにも古本屋がちらほら。
「源喜堂」は、18歳で上京して間もなく知り、以降たまに、思い出したように訪ねる。
デザインもののが充実している。南青山の「嶋田洋書」とか、海外の雑誌や書籍を扱うお店はあったけれど、Amazon以前は新刊はどうにも高価だったもの。
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肉といえば牛、鶏肉はかしわ。
とんかつとちゃんぽん以外では、豚肉は食卓にのぼらなかった。
納豆は食べたことなかったし、そもそも買うこともなかった。
多少幅が広がった、とはいえ、1987年に上京して36年経っているのに、私の舌はいまだに生まれ育った西のまんま。
今現在、リアルタイムで住んでいる人よりも、もっと凝縮されていて、その食生活を実践しているかもしれない。
そんな私だけど、
そば、とんかつ、天丼は東京に限る!と思っている。
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そばを食べる習慣はなかった。
文字どおり、年に一度、大晦日に食べるくらい、それもうどんとちゃんぽんで作ったり、カップ麺だったりしたこともある。
小学4年生の春休み、親戚の家に預けられているときに、別の親戚のおじさんがやって来て、温泉に連れて行ってくれて、湯上がりにそばを食べたのが2〜3度。
上京して、学生のときに三茶でバイトしていて、近くにあるモダンコンクリートのビルにそば屋があり、なかなかいいよ、と複数の人に言われて食べに行った。
20代、2駅隣の桜新町に住んでいた頃、年末年始に帰省しないとき、大晦日からやって来て一緒に過ごした友人と、年越しそばをと、早い時間に出向いた。
でも、その程度で、習慣とはそんなもんだろうけど、そもそもそばを食べるという選択肢が私の中になかったので、立ち食いそば屋に寄る、ってことすらしたことがなかった。思いもしなかった。
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2002年初夏、イギリスから帰国して丸1年経ったとき、仕事で信州に取材に行った。泊まりで1週間ほどだったかな。
信州なので、そば屋の取材もある。が、前述のように、経験もなければ知識もない。付け焼き刃で勉強、勉強。
移動の車中でカメラマンに「ねえ、そばがきとそば湯って何? どう違うの?」と訊いていて仰天され(そのカメラマンは東京生まれ東京育ち)、
「去年イギリスから戻った、って聞いたけど、帰国子女だったんだ〜」と返され、慌てて、違う!違う!と説明する始末。
それだけ、そばのことをな〜んにも知らなかったのだ。
もっとも、定年退職後のおじさんはそばに走る!ってのもあり、ワイン然り、近づかない、近づくまい、の頭が働いたのも事実だけど
(頼みもしないのに、蘊蓄のひけらかしをとうとうとご披露されるのは、勘弁〜)。
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私がそばを日常的に食べないのは、慣れの他にも理由があって、食事とするにはあの量だと足りない、のよね。。。
なので、かっちり食事として食べるのであればセットになる。そばはお吸い物代わり、というわけだ。こういうときは、チェーン店に行くことが多い。
加えて、魚にしろ野菜にしろ火を通して食べるのが好きで、冷たいものを好んで食べない、ってのもある。
小腹がすいて、そばチェーンに入ったときは、温かいものを注文するし。
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神保町から神田の方まで来て、ぶらぶら歩くのが楽しい。それは、建物やしつらいも趣のある、江戸の粋を感じさせる店が点在するから。
この日、用事が済んで、歩いているうちにちょっとお腹がすいてきた。
ちょうどおやつどき、
「竹むら」に行こうかなぁ、「近江屋洋菓子店」に行こうかなぁ、と思ったけれど、甘いものの気分じゃない。
向かったのが「神田まつや」。
ランチタイムから夜まで通し営業だった、はず。
そば食べよう、になったのは、
「そばととんかつと天丼は、東京で食べるのがいいのよ、今だに西の人間の味覚で生きてても」なんて会話を数日前に交わしたのも影響したのかもしれない。

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ざるそばを頼む。
お酒も欲しかったけれど、夕方寄るところがあったので、がまん。
年齢層はさまざま、カップルもいるし、ひとり客も少なくない。
こういう昔ながらのそば屋は男性同士やグループが多いんだよね〜。
他の飲食店は、同性の場合だと、圧倒的に女性、なんだけどね。
(話が逸れるけど、飲食におけるジェンダーや国の固定概念、なんとかならんかね)
Afternoon Treat
私はさくっと食べてさっと出ちゃったんだけど、
腰据えてのんびりしようって人たちもちらほら。
若いカップルがビールと、好みのそばと、天ぷら頼んで、分け合いっこしているのもいいし、
おじさん二人連れがお酒とあてを頼んで、乾杯しているのもいいし、
シニアグループがひととおり飲んで食べて、しめにおそばを食べて、くつろいでるのもいい。
男性たちが、実に楽しそうなんだよね〜。
はっきり言って好きですよ、こういうところでわちゃわちゃしている男の人たち。
今の時代、おじさん、ってだけで槍玉に挙げられるでしょう、あれ、私、大嫌い!
おばさんでやったら炎上もんだよね〜、さしたる根拠もなく、おじさんは嘲笑していい、諸悪の根源、って風潮、大嫌い!
そりゃ、あちゃー、みたいな人いるけど、それって年齢性別に限らず、いずれも一定数いるよね〜、じゃないの?
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なんだかんだ、会食なんかでそば屋を指定されることもあり、少しずつとはいえ慣れてきたんだろう。
温かいおそばやセットはチェーン店や立ち食い、街のそば屋が好きなんだけど、
ざるやもり、なら、そば屋がいいのよ、私。
正直、いまだに、そばそのもの、つまり、麺についてはよくわからない。
配合など、多少のことは感じるようになったけれど、産地の違いだの、馥郁なんて形容されたりなんかしたら、もうお手上げ。説明されればそんなもんかな、と感心はするけれど。
だって私、そば経験値が圧倒的に低いんだもん。
でも、私の舌のベースが西で、だからこそ、逆にはっきり感じるんだと思うんだけど、
圧倒的に、ビビッと私のセンサーが働くのは、つゆ。
概して、東京の、そば屋のつゆは縦にストンとまっすぐなのよ。キリッとして裏表がなくって、きっぷがいい。これが小気味いい。
私は麺類の中ではうどんが好きで、うどんのつゆ、ひいてはだし、これと根底を同じとするものが、私の和食、とまではいわないまでも、日常のおかずにしろ、これがベースで、
ふわっと横に広がるのよね。よくいえばやわらかい、悪くいえば弛緩してる。
X軸、Y軸のように、東京のそばのつゆはまったくベクトルが違う。横ではなく縦。これでいい。こうでないと、締まりがない。
そばをたぐっているときも、だけど、残ったつゆにそば湯を注いで飲むときに、つゆはこうでなくっちゃ、な気分になる。
そば湯で割るには、私はわさびを使わない分余計に、だらけてないつゆが望ましいのね。

・・・
「そばととんかつと天丼は、東京で食べるのがいい」と話したとき、その方は私が今だに西の人間の味覚で生きているのを知っていたので、虚を突かれた顔をしながら、「(西で)どこかいいそば屋あった?」と訊かれ、う〜んと腕組みをして、答に窮してしまった。
麺としては、おもしろいな、いいな、なお店はあったけれど、私のそばの要、つゆがなぁ、なんだよなぁ。知らないだけ、出合ってないだけ、かもしれないけど。
tue 13/06/23

