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イギリスの食文化研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


by ricoricex
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『ザ・ビートルズ:Get Back』



そもそも当初は映画で、ということで、私もその頭でいたから、コロナで状況が変わり、配信で3部作8時間になったときにすぐに飛びつかなかったのです。
映画は映画館で観たい、自分のスタンスと異なっていたし、
同時期を扱った映画『Let It Be』が辛い、とも聞かされていたし
(『Imagine』でもなかなかに辛かったし)。
オンライン/サブスク・メンバーにこれ以上なりたくないなぁ。死はある日突然やってくる。その時に困るのは目に見えているから、増やしたくない、という頭があったから。
そこには、大きな興味はあるけど、待っていれば映画館でやるだろう、という願望もあったのです。

でも、ある時指摘されて、はっとなりました。
映画館で、というのはあくまで私の願望で、配信用に作ったのは文字どおり配信用に作ったわけで、だったら配信で観ればいいじゃないか、と。
なわけで、遅ればせながら、2月頭にディズニープラスで公開された『ザ・ビートルズ:Get Back』を観るにいたりました。

もういろんなところでたっぷり語られているだろうから、要所要所で気づいたことを。

<食シーン>
マグなりカップ&ソーサーなりで、お茶(紅茶)を飲んでいるぁ。ワインも開けるしね。
今は変わっただろうけど(パブでのビールの価格の上昇、クラフトビールの隆盛、パブではなくガストロパブへの転換)、ビールはパブの飲み物、ってことか。
うっすいトーストをつまんだり、トーストにマーマレードを塗ったり、サンドイッチだったり、最初の方では
ロック・ケーキも出てきたり(ビスケットとパンの中間のようなお菓子)。
チョココーティングされたビスケットはマクヴィティ、かな。

※ちなみに、ロック・ケーキはこんなお菓子です(↓)。


パート2の2時間6分くらいのところで、ランチのオーダーをとるときに、リンゴ・スターがチップスがどうのこうの、ってシーンがあり、これ、イギリスでいうchips、つまりフライドポテトじゃないのかな?
字幕はチップスになっていたように思うけど、チップスだとポテトチップスと勘違いしないかしらん(イギリスでポテトチップスはクリスプス/crisps)。
状況的に、ランチメニューのオーダーであれば、フライドポテトだと思うし、字幕もそうした方がよかったのでは。

あ〜っ!と思ったのは、椅子に座ってお茶を飲んでいるでしょう。
近くにテーブルがない時、彼らは地べたにマグを置くのよね。
私、これに慣れなくって。室内は土足厳禁にしている家もあるけれど、それでも慣れないのよ、私。

<愛と平和と、個人主義と>
とかく、際立ったわかりやすいものが伝わってきていたから、ジョン・レノンって“愛と平和のアクティヴィスト”みたいな捉え方をしていたけれど、
いや、本当に“愛と平和のヒッピー”を実践していたんだ!とわかった。
声を荒げないでしょう、(リーダー的な立ち位置なのに)押し付けがましいことをしないでしょう、みんなで平等に平和に。
まさにヒッピー思想じゃん!

イギリス人気質もあるのかな。
イギリスの人気テレビ番組『The Great British Bake Off』を視聴したアメリカ人がコンペティション番組なのにギスギスしていない、和気あいあいとしていて驚いた、と発言していたのを思い出した。
もちろん途中途中でハラハラするところはあるけれど、基本おだやかなのよね。

ビートルズがライブ活動をやめてスタジオ制作中心になった頃からパーソナルな事柄を歌にし始め、
これって普遍性からかけ離れる、って声は出なかったんだろーか
(実は個人を突き詰めると大きな普遍性にはなるんだけど)、とずっと疑問だったんだけれど、
そこは個人を尊重するんだよね。
腹の中ではどう思っているかはわからないけれど、
これ演るの、OK演ろう、みたいな。
会話の端々に読み取れるし、ルーフトップ・コンサートを目撃した観客もそういう発言をしている。

<船頭が必要>
解散はもっともだなぁ、と思ったのは、船頭がいない、ってこと。
ポール・マッカートニーがかろうじて、ジョンやんないの? 俺?みたくやろうとしていたけど、他のメンバーが納得していない、ってのが、ね。

人は複数になると船頭が必要なのよ、グループでも例え2人でも。
いい/悪い、じゃなくって、ものごとの最終判断をする人間が要るのよ、時に憎まれ役になってもね。
全員が全員、Yesになってから物事を進めるなんて不可能なのよ。
ヒッピーはみんな平等、なので、全員Yesの状況を求めていたんだろうけど、組織(グループ)はそれでは機能しない。もちろん、個人の権利としては平等だけどね。

<風向きが変わる>
トゥイッケナム・スタジオの1部は、確かに重々しい空気もあった。
でも、それを壊して風向きが変わったのは、ビリー・プレストンがやって来てからじゃないかな。

まったく知らない人じゃない、かといって親しいわけじゃない、知り合い、ぐらいの程よい距離感の人間が入って、緊張状態が緩和される、ってことは珍しくなく、
まさにこれじゃん!と思ったわけです。

<寄り集まってモノを作っていく>
大いなる助走を経て、ルーフトップ・コンサートというクライマックスにいくわけで、
ライブが始まった瞬間にスイッチが入る。それはもう鳥肌もんです。
ビルのオフィスのエントランスでは、うるさいとの苦情を受けてやってきた警官とのらりくらりを交わしながら、屋上では演奏が続けられます。
ここからレコードになった音源もあるわけで、そのくらいすさまじいパフォーマンスなわけです。

ルーフトップ・コンサートもだけど、ここにいたるまでのスタジオで作り上げていく様子は、とりわけジョン・レノンとポール・マッカートニーが阿吽の呼吸で音を合わせていく様子は、やっぱいいなぁ、と思うのです。

どうしても突出した事象ばかりが伝わるでしょう。
こういう普段の様子で納得できることたくさんあって、8時間は長いけれど、必要な8時間で、これがなければルーフトップ・コンサートのシーンでここまで突き動かされなかったでしょう。

最後、コンサートで終わらず、ランチをとったら仕事だ、で終わるのもいい。


ちなみに、私の場合は、自分が編集者(映画でいうと監督、ですね。製作指揮というか)で本を作るときに、僭越ながら、こういうことを体験するんですね。
カメラマンに、デザイナーに、ライターに依頼して、アイディアを出しながら本を作り上げていく。
カメラマンやデザイナーはギターやドラムと置き換えるとバンドと一緒。

スケジュール通りには進まず、トラブルは常につきものだけど、
ときどき、波に乗る、みたいな瞬間も訪れる。
ぐぐっとギアが入ることがある。
これ、ひとりじゃできないんですよね。
集まってやるからできる。

やりがい搾取のように言われる業界で、その側面はまったく否めない。
それでも、ハイパーになれる、モノを作り上げていく、ってのは本当に楽しいもんで、だから私はこの仕事を今も続けているんだろうなぁ、と思うわけです。

<黄水仙>
『ザ・ビートルズ:Get Back』_e0038047_17241652.jpg

トゥイッケナム・スタジオでは黄水仙が飾ってあって、花があるのはいいなぁ、と思いながら観ていました。
(ジョージ・ハリスン宛に届けられたのも黄水仙、だったかな?)
水仙はイギリスで(日本でも、か)春の訪れを感じさせる花だし。

ふと、花言葉はなんだろう?と思いました。
私、こーゆーの明るくなく、
水仙は、ギリシア神話の登場人物に名前が由来していて、そのため花言葉は“うぬぼれ”“自己愛”ってのは知っていたのですが、
色によって違う意味がある、ってのを思い出し、
黄水仙だとなんだろう?と思ったら、
“私のもとへ帰って” “もう一度愛してほしい” とあって、
“Get Back”ととれなくもない。
だからなんだ、ではありますが(笑)。


<課題>
彼らがリヴァプール出身であること、アイリッシュ系であること、
ぼんやり感じていたことがぼんやりと形をなしてきたけれど、まだ言語化にいたらない。
いつか、きちんと。





by ricoricex | 2022-02-18 00:00 | 映画