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イギリスの食文化研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


by ricoricex
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ランチ@エフ・クック/F. Cooke(ロンドン)


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こういうイギリス(というよりもロンドン、か)に残る庶民の料理のことは見たり聞いたりして、知ってはいたのだけれど、だからといって食指が動くわけじゃない。私も現代っ子ですから。
とはいえ、味うんぬんではなく、好奇心と体験しておかないと、という思いはずっとあって、とはいえ、今では数少なくなった店舗が残るイーストに、なかなか足が向かなかったわけです(私はロンドンは完全に西っ子、なんですよねぇ(東京も、か))。

21世紀に入って、ロンドンはイーストといわれるようになり、その筆頭にあがるのはショーディッチで、人と人に相性があるよに、街(エリア)と人にも相性があって、悪くはないけれど、そこまでピンとこなかった私が、ここ、いい! 次にロンドンに住むことがあれば候補地のひとつだわ!とすっかり気に入ったのがハックニー。

ランチ@エフ・クック/F. Cooke(ロンドン)_e0038047_16325009.jpgこのハックニーのエリアにある週末マーケットのブロードウェイ・マーケット/Broadway Marketは、カジュアルで雑多な地元感があり、それでいてスクラッフィーじゃないあたりが心地よい。
ほんと、楽しいなぁ。

このブロードウェイ・マーケットを訪ねたときに、あっ!と思わず声をあげそうになったのは、庶民の味を提供する店として必ず登場するエフ・クック/F. Cookeがあったから。
エフ・クック/F. Cooke
https://twitter.com/pieandmashcooke

ここにあったんだ〜!
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とはいえ、その日はすでにお腹は満たされていたし、ローカル感が強ければ強いほど、ストレンジャーは足を踏み入れるのに躊躇するというか(ぱっとしない私鉄沿線のせんべろに行くようなもの。ん? ちょっと違うか)。
とにかく、場所だけは、ブロードウェイ・マーケット沿いにあるので、忘れようも間違えようもない。

それから数年、頭の片隅にはあって、ブロードウェイ・マーケットにも訪ねることがあったのだけれど、入店するにはいたらず。

こりゃ、エフ・クックに行く、という明確な目的がないとお店に入ることはないな、と確信。
さらにこの手の、長く続く店が閉店したニュースも入ってきて、思っている以上に“絶滅危惧種”路線をまっしぐら。
危機感を感じ、行けるときに行っておかないと、の思いも沸き上がってきます。



あるとき、このお店のことを他愛ない会話の中でポロっと言ったら、「行ってみたい! 行こう!」となり、予定をすり合わせて友人と向かったのは、2018年11月7日(水)のこと。

エフ・クックは庶民の、有り体に言うと、労働者の味である、パイ&マッシュを提供する店。
今でこそ、スマートカジュアルのお店なんかでも、ぐっとしゃれたパイ&マッシュを提供していますが、エフ・クックでは、まったく飾り気がなく、べっとりとした、でも、お腹はしっかり満たしてくれる、そこにあるのは、いかにも昔から続く食堂らしい料理(だからこそ、気後れするわけですが(笑))。

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メニューはきっぱりと、パイ&マッシュとウナギのゼリー寄せのみ。
パイ&マッシュはミートパイ。ウナギのダシに新鮮なパセリを加えて作ったリカーがたっぷり注がれます。
この緑色がねぇ、お世辞にも、どう見てもおいしそうに見えない(笑)。
なんともおどろおどろしくって、魔女の食べ物かしらん、って連想してしまう私です。

ウナギのゼリー寄せは、ウナギの煮こごり、というか、ウナギをぶつ切りにして煮込んだもので、冷ます工程で、コラーゲンなどのタンパク質が煮汁にとけ出し、これがかたまるとゼリー状になるという代物。
これがまた、グロテスクというか、なかなかパンチのある見た目なのです。

ともあれ、物は試し、とぐっと勇気をふりしぼって、注文。
・パイ&マッシュ/Pie & mash £4
・ウナギのゼリー寄せ/Jellied eels(10個) £7
しめて、£11(サーヴィス料、なんてものは存在しない。チップを少しおいていったけど)
これで、2人前。
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ウナギのゼリー寄せは5個だと£3.50(5個でも10個でも1個あたりの金額は変わらず。明朗会計だ!)
お店の、いかにもたくましそうなおばちゃんが、2人なら10個ね、と言われ、素直に従ったのでした。

味はですね、シンプルというか、見た目ほど悪くないんですよ、ホントに。
ただね、おいしいか、と問われると、別段おいしいわけではない。でもって飽きちゃう。体験としてはいいんだけれど、ね。
正直、同じ値段払うなら、スーパーマーケットのレディミールの方を選ぶなぁ、でした、私には。

同じことを友人も感じたようで、普段は残さず食べるタイプの人なのに、しかもパイ&マッシュはシェアしているのに、完食にいたらず。
珍しいな、と後で理由を訊くと、「なんか単調で、食べ続けるのはつらくなった」と。
深く同意。


内装のタイルやベンチスタイルのテーブル席、厨房にどんと構えるソースの釜、ボクシングの古いポスター、ビネガーや塩・コショウの卓上調味料がいちいちレトロ。
床にはおがくず(かな?)は巻かれ、これは滑らないように、ってことのよう。
ざらっと薄い紙ナプキンやペラッペラのカトラリーも、いやぁ、チープなこと、この上ない。
こういうのは、なかなか感動的です。
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特におもしろいな、と思ったのが、ナイフはなく、スプーンとフォークで食べる、ということ。右手にスプーン、左手にフォークを持ち、スプーンはナイフの役割も担っていて、パイ皮など、切る必要があるときは、スプーンの縁を使うってこと。
口に運ぶカトラリーはスプーンってわけではないようだけれど(スプーンで食べてもフォークで食べてもいいみたい)、タイ料理みたいだなぁ。
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お店に入ったのはランチタイムにはやや早い、12時を回ったばかりでほかにお客さんがおらず(しばらくして、常連のおっちゃんたちがやってきた)、
お店のおばちゃんと話していたら、開業したのは1862年(最初の店舗のオープンは、やはりロンドン・イーストのクラーケンウェルで。このお店もこの場所で100年以上営業を続けています)、このそのときからレシピを変えていない、と。
材料の品質や味は変わるし、本当に同じレシピかどうかは???だけれど、「レシピを変えていない」の言葉に危機感を覚えたんですね、私。
というのもいつも同じ味を提供している(ように思える)人気店は、同じレシピではなく、時代に合わせて微調整していて、その結果として、いつ食べても同じように思える味を作っているから。
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ふうむ。

この予感が的中、というよりも、そういう流れなんだろうな、とばかりに、2019年5月に入って、エフ・クック閉店のニュースが飛び込んできました(↓)。


大きな理由は、味、ではなく、賃貸契約。ほかにも賃料の高騰、後継者、お客の高齢化、嗜好の変化、などが考えられます。
次にブロードウェイ・マーケットに行くときは、エフ・クックはもうないかもしれない。
以上、ぶっちゃけの正直なところを綴りましたが、駆け込みで体験できたことは、大きな経験です。
記録に残しておく意味で、動画も掲載されている以下の記事のリンクを張っておきます(↓)。

ランチ@エフ・クック/F. Cooke(ロンドン)_e0038047_16133236.jpg


wed 07/11/18


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○ブロードウェイ・マーケット/Broadway Market(ロンドン) → https://ricorice.exblog.jp/25919385/
○朝食@イー・ペリッチ/E. Pellicci(ロンドン) → https://ricorice.exblog.jp/25893204/
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○君は“揚げマーズバー”を食べたことがあるか?(スコットランド) → https://ricorice.exblog.jp/27961084/


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by ricoricex | 2019-05-30 00:00 | イギリスの店レポート