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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


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グルテンフリーだけじゃない。“free from”に今のイギリスの食の潮流をみる


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日本でもようやくグルテンフリーが認識されてきたでしょうか。
(なんで米を、米粉(ライフフラワー)含め、大々的にプロモーションしないのか、と〜っても不思議!)

よくいわれるように、ヨーロッパ(イギリス含む)オーガニック先進国で、気負わず当たり前のようにスーパーマーケットでもオーガニック食品は陳列されていて、いとも簡単に入手できます。
ヴェジタリアンもヴィーガンも多く、実際に私の友人にもいて、ひとりは出会ったときにはすでにそうだったので、25年以上はヴェジタリアンだし、別の友人はヴェジタリアンではないけれど、自分が選択する場合は、ヴェジ・メニューを選んだりしています。
自宅で作る(食材を買う)にしろ、外食にしろ、それで困ったことは、まず、ない。
食品にはヴェジタリアン表示があるし、飲食店にもヴェジタリアン向けメニューはあったり、対応したりしてくれるから。

出所のわかる食品(というか食材)を自然に近い形で食べる“クリーン・イーティング/clean eating”の考え方も、自然な食材を丸ごと食べる“ホールフード/whole food”も、”環境に配慮した“サスティナブル”も、先に述べたオーガニックやヴェジタリアン/ヴィーガンと根底は一緒かな〜、と私は捉えています。
もちろん、健康や宗教上ゆえ、ということもありますが、それよりも現在においては、個人の嗜好が大きい。
意地悪なことをいうと、“正しい食”には文句のつけようがありませんから、それを実践していることで得られる自己肯定感というか満足感が、実んところ、真の目的かな〜と感じてみたり。
同時に、ファッションやトレンドの側面もありますし、マーケティング戦略ゆえ、でもあったりするのでしょう。
イギリスは世界有数の肥満国で、特に子供の肥満は大きな社会問題になっていて、それゆえ「政府/保健省主導じゃない?」とは友人の意見。


これらを踏まえて、といえばいいのか、以下も、これらと同じ現象として括っていいかと思います。
それは、ここ数年イギリスでは“free from”食品をたくさん見る、ということ。
すぐにそれとわかる商品も販売されていますし、大型スーパーマーケットなどでは、専門のコーナーが設けられているほどです。
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“free from”とは?

“グルテンフリーという言葉を思い出すとわかるように、“○○を使っていない/含んでいない”ということ。
“グルテンフリー/gluten freeが“グルテン不使用”を意味するように、“egg free”であれば卵不使用”、“dairy free”であれば“乳製品不使用”となります。
何を使っていない/含んでいないかは各食品で異なりますが、その種類をざっと取り上げると、こんなものがあります。

・gluten free(グルテン不使用)
・wheat free(小麦不使用)
・dairy free(乳製品不使用)
・egg free(卵不使用)
・nut free (ナッツ不使用)
・soya free(大豆不使用)

もちろん、これらだけでなく、ほかにも細かくあるわけで、ウォーカー/Walkersのショートブレッドやマクヴィティ/McVitie'sのビスケットなど、おなじみのお菓子も“free from”に対応した商品が販売されています。
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大型書店に行くと、食/料理本のスポットには、こういうクリーンでヘルシーなコーナーもありますし。
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“正しい食”に異論はありません。
でも、なんだろうな、人間は“正しさ”だけで生きているわけじゃない、割り切れない部分もあるし、邪悪なところもある。
それは食も同じじゃないかな、って思うのです。
ときどき無性に思いっきりジャンキーなものを食べたくなる、そして食べる。それを否定したくないし罪悪感も感じたくたいんですよね〜、私は。

“free from”などの現象は、思想というよりもライフスタイル、といった方がいいでしょうが、これって今の時代のフラワーチルドレンやヒッピー思想なのかな、とも思ってみたり。

歴史は繰り返す。

フラワーチルドレンやヒッピーの時代、アメリカではヴェトナム戦争、フランスでは5月革命、イギリスではスウィンギング・ロンドンで揺れる、1960年代後半から1970年代にかけて起こった、自然回帰の考え方に近いのかな、と感じたりもしています。
卵が先かニワトリが先かになりますが、政局不安は、人々の気持ちの不安の表れでもある。
一度立ち止まって、原点に帰ろう、正しいことを実践したい(少なくとも自分は正しいことをしている、そのことで気持ちが落ち着く)、そんな人々の心情が、“free from”などの現象につながっているのかな、とふんでいます。
(もっというと、海洋汚染防止のための、レジ袋、使い捨てのプラスティックストローや紙コップの廃止も、根底に流れるものは同じかもしれません。)


2年前のニュースで既に具体的な数字でもって、この“free from”現象を取り上げられたり(↓)、

ちょくちょくニュースで報道されていたりして、ブログに書こうと思いつつ、やっと今。。。
(ちなみに上記のニュースは、“2017年頭の3カ月で、イギリスでは半分以上の人がfree from食品を購入した”という内容です)

そう考えると、ジェイミー・オリヴァー/Jamie Oliverの“フード・レヴォリューション/Food Revolution”は数年早かった、のかもしれません。
ものごとにはタイミングがあるなぁ、と思うのと同時に、ジェイミー・オリヴァーの活動が、現在の“free from”などの現象の素地を作る役割を担っていたのかもしれないなぁ、と感じるのです。




~~これまでの関連記事も併せてどうぞ
○クリーン・イーティングの立役者、Deliciously Ellaが実店舗を1つに集約 → https://ricorice.exblog.jp/27064276/
○イギリス発、今年目を通しておきたい新刊料理本・ベスト11 → https://ricorice.exblog.jp/27706802/
○シュガー・タックス(砂糖税)導入は問題解決の糸口となるか? → https://ricorice.exblog.jp/24308455/
○英国のスーパーマーケットでビニール袋&プラスティック容器撤廃が進行中 → https://ricorice.exblog.jp/28060403/
○イギリス政府、2年以内にプラスティックストロー廃止の方針を打ち出す → https://ricorice.exblog.jp/27579683/
○イギリスおよびアイルランドのマクドナルドでプラスティックストロー廃止へ! → https://ricorice.exblog.jp/27287954/
○英国コーヒーチェーン最大手のコスタが、紙コップのリサイクルに本気で取り組む → https://ricorice.exblog.jp/27159168/
○イギリス全土でスーパーマーケットのレジ袋が有料に → https://ricorice.exblog.jp/23738821/
○Yellow: A Colour of Revolution/黄色は革命の色 → https://ricorice.exblog.jp/27681158/


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by ricoricex | 2019-04-24 00:00 | イギリス社会