最後に前を通ったのは2000年代半ば、だった気がする。
なぜなら、私の行動範囲にここは入っていなくって、
その日は朝、築地に行き、その後、時間に余裕があったので、
前を通って新橋に出ようとなったのです。
それ以前も、同じ行動パターンで前を通って立ち止まったこと、数回。
その時は1階の道路に面した部屋の丸窓から部屋の中をのぞき、
中に入って見たいなぁ、とため息。
でも、だからといってどうすればいいのか、皆目見当がつかず。
その建物は、中銀カプセルタワービル(“なかぎん”と読みます)。
黒川紀章設計。1972年竣工。
一度見たら忘れられないその外観。
ここではどんな建物かは省略します。
気になる方は、ググるだけでもたくさんの情報に出合えますし、
よりきちんとした情報についてはより詳しい方にお任せ、です。
それから歳月が流れ、いつだったか今年に入って、
フェイスブックのニュースフィードに上がってきたのは、
「中銀カプセルタワービル見学ツアーに参加した」という知り合いの投稿。
えっ、中銀カプセルタワービルって見学できるの?
すぐにコメントを入れたら、その方から、見学ツアーについての情報を教えてもらい、
とはいえ、なかなかタイミングが合わないなぁ、とうなだれてしまいました。
ある日、就寝するのが遅くなってしまい、ふと見ると、
私のスケジュールにぴったりのツアー告知が、フェイスブックのニュースフィードに上がっているじゃないの!
すぐに申し込み、無事、参加、となりました。
台風25号が東京を襲った前日で、そぼ降る雨の中、向かったのでした。
参加者は、私を含め6人。
1階以外は撮影は自由、ということで、50分間興奮しっぱなし、でした。
個々のカプセル自体は10平方メートル、実際に使用できる面積としては9平方メートル。
カプセル、ということから、さぞ狭いのでは、と思っていた私の予想は覆され、
意外と広いじゃない、でした。
それは圧迫感を感じさせない、コンパクトに工夫が施された室内デザインの力が大きいのでしょうね。
建築は、どんなに写真がよくても文章がよくても体験に勝るものはない、というのが私の持論です。
そこで過ごすことでじわじわと体に染みて、それが知ることにつながるように思えます。
私がこれまでに一番衝撃を受けた建築は、ロンシャンの礼拝堂です。
(東京・上野の国立西洋美術館は世界文化遺産に登録されるほどのものかぁ?
むしろ、向かいに建つ、ル・コルビュジエの元で学んだ前川國男による東京文化会館の方がよっぽど価値が高いんじゃないの?)
ローカル線の最寄り駅の風景や空気感から始まり、
建物が目の前に現れたときの、時空が歪んだような感覚、
躍動感と未来への希望が感じられるデザイン、
建物の中に太陽の光線が作り出す、ステンドグラスの色が刻一刻を強弱や濃淡を変えて奏でるメロディ。
従来の重々しい荘厳な宗教建築とは様相が異なるけれど、
でもそこにはやはり崇高な空気があったのです。
これらが今も、まざまざと思い出され、むしろ、その感覚は強くなっているようにも思えます。
(後になって、それまで提唱してきた「近代建築の五原則(新しい建築の5つの要点)」を自ら壊して、新しい建築に挑んだことに感動したのです)
まあ、そんなわけで、今なお斬新で驚きに満ちた中銀カプセルタワービルも体に刷り込まれた、かな〜。
建物やツアーのもろもろはこちらを(↓)。
中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト
https://www.nakagincapsuletower.com
そうそう、以前は丸窓から中をのぞけた1階の部屋は、その前を何台もの自動販売機で覆われていました。
私は所有することに興味がないんですよね〜。
むしろ積極的に持ちたくなくって。
家族とか会社とか自動車とか。不動産も然り。
ふと自由に動きたくなったときに、これらがあると、物理的というよりも心理的に大きな足かせになって、
自分の意思に反して、現状維持を選ばざるを得なくなりそうで、それが嫌なんですよね。
なので、法人化なんかも(個人事業主なんでね)、自分の気持ちがどうにも動かず諦めたし。
思い立ったときにいつでもどこにでも行けるように、自分を自由にしておきたい。
まあ、年齢を重ね、そこまで頑なな感じではなくなった、かなぁ、って気はするけれど。
そんなゆるい感じになったこともあるのか、
こういう建物は壊されるのを阻止するために、買いたいなぁ、と思ってしまう。
もうひとつ、建物保持のために買いたい部屋があるんですよねぇ。
sat 29/09/18
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