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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


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ルビー・タンドー/Ruby Tandohが新聞「ガーディアン」の連載を降りる!


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これは、非常に考えさせられる。

2018年6月7日(木)づけで報道されたのは、以下の記事。

London Eater(ロンドンの飲食メディア)
Food Writer Ruby Tandoh Announces She’s Leaving the Guardian
https://london.eater.com/2018/6/7/17437558/food-writer-ruby-tandoh-leaves-guardian-food-hell


The Independent(イギリスの新聞)
Ruby Tandoh quits column due to ‘elitist’ nature of food culture
https://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/ruby-tandoh-bake-off-guardian-recipe-column-twitter-elitist-food-culture-a8388071.html



ルビー・タンドー/Ruby Tandohといっても日本ではご存知ない方が多いかと思いますが、彼女はケーキ作りの腕を競い合うイギリスの国民的人気番組「The Great British Bake Off」シリーズ4(2013年)のファイナリストで、現在は料理家&コラムニストとして活躍。
その若さ(彼女は1992年生まれ)と歯に衣着せぬ物言い、政治的な発言もがんがん行い(珍しいことではないものの、確かに彼女は突出している印象です)、その矛先が同業者である料理家に向かうことも。
そのため“恐るべき子供(たち)”のごとく称されることもあります。

このルビー・タンドー、現在までに、『Crumb: The Baking Book』『Flavour: Eat What You Love』『Eat Up: Food, Appetite and Eating What You Want』の3冊の本を出版
(最新版の『Eat Up』は読む価値アリ!とふんでいます(まだ読んでいない、どころか、買ってもいない)。Amazonでポチしないと!)。


また彼女の主戦場のひとつには、大手新聞(日本では高級紙と呼びますね)「ガーディアン/The Guardian」のコラム寄稿があり、「The Great British Bake Off」放送後からテーマが変われど続けており、
これを降りる、とツイッターに連投したことがニュースとなったわけです。

その理由を以下のように述べています。
「飲食業界の内輪ノリには、もううんざり!」
「方向性を決めるのを何度も何度も繰り返すなんて、病気なのか(自分が上なのを誇示したいがゆえの)エリート志向の表れなのか。本当に腐り切っている!」とばっさり。

ここまでは、ふうむ、なのですが、以下が非常に考えさせられたのです。

「ポッシュな人たちってのは、身近にある便利な食品を(なぜそれが大衆に受け入れられ愛されているのか考えもせず)こきおろす。スリムで健康的であることを必須事項として掲げる。
果たしてそうなの? 私は私なりにやってみた。でも、もう無理!」

これは言葉を翻せば、こういうことなんだろうなぁ、と思うのです。
「食のメディアに足をつっこんだ人間は、とかくマニアックかつスノッブに向かいやすい。
本来、食べるという行為は、自分を高く見せるための道具ではないし、ひけらかすためのものでもない。
楽しく温かく、寛容なもの。
その上で、知識があれば、技術があれば、健康的であれば、なおよし」


私自身に話を移すと、
自分のお金で自由に飲食ができるようになった頃、30年近く前の東京は、
街の食堂、はたまたホテルのファンダイニングだけでなく(今よりもホテルはずっとうんと敷居が高かった)、本格的とされる店があちこちにでき、これは、奮発するときもあったけれど、自分で払って食べられる範疇で現れ始めたってこと。
こういうシーンのライブ感と、加えて、私は日本の地方のワーキングクラス出身で素地がない分、余計に吸収したい気持ちが止まらなくなって今にいたる、というね。

多分に自分にも偏狭的な傾向はあることは認識しています。
でも同時に、スノッブな人たちと食事に行って、食材やワインの蘊蓄を延々語られたときのうんざりさ、ってのも忘れられなくって。

初期の林真理子氏のエッセイだったかに、「大衆の感覚ほど強いものはない」「わざわざベーカリーに行かずともスーパーマーケットの工場生産のパンで満足できていたときの方が幸せだったんじゃないか」という指摘があり、ほんと、そうだよなぁ、と深く頷いたり、
お上品な人たちは眉をひそめて非難したけれど、週刊文春の「恨ミシュラン」はよくやった!って心の中で拍手を送ったり、
それらは今も忘れられない。そして忘れてはいけないんだ、と痛感した次第。

なもんで、今回のルビー・タンドーの発言には、どうしても考えさせられてしまうのですよ。


~~過去の関連記事も併せてどうぞ
○「The Great British Bake Off」シリーズ4が驚異の視聴率で終了 → https://ricorice.exblog.jp/21235932/
○「The Great British Bake Off」シリーズ9の番組スポンサーにAmazonが! → https://ricorice.exblog.jp/27118252/
○「サンデー・タイムズ」のレストラン批評家にマリーナ・オローリンが! → https://ricorice.exblog.jp/26073000/
○デリア・スミスがコンパニオンズ・オブ・オナー勲章(CH)を授与される → https://ricorice.exblog.jp/26183473/




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・『イギリスの食、イギリスの料理&菓子は“イギリスの食研究家”“食の編集者/ダイレクター/ライター”羽根則子のブログです。

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by ricoricex | 2018-06-11 00:00 | イギリスの食ニュース