モダン中近東料理とお菓子の店で、色とりどりの野菜、フレッシュハーブを多用した料理を大皿にざっくりと盛ってディスプレイも好きだし、フレッシュな素材をこねくり回さずぱぱぱっと使っているせいか、食べ疲れしない。
値段はまあ、ロンドン価格なのですが、特にベルグレイヴィア店の場合、ここはデリがメインなので、それこそそこそこ近くにあるハロッズ/Harrodsとか、もしくは手軽にスーパーマーケットのウェイトローズ/Waitroseやマークス&スペンサー/M&Sで買うんだったら、ちょっと足をのばしちゃおうかな、という気になります。
前置きが長くなりました。
このオトレンギ、シェフのヨタム・オトレンギの苗字を店名にしたもので、既にレシピ本を何冊か出版していたり、新聞や雑誌、ウェブによく登場したりしているので、顔を知っている人も多いんじゃないかな。
そして、オトレンギは共同経営であることも広く知られていて、ビジネスパートナーはサミ・タミミ/Sami Tamimi。
ある日、ウェブをつらつらとさまよっていたら、こんな記事にでくわしました。
サミ・タミミの理想の食事
MY PERFACT DAY; SAMI TAMIMI
https://www.1843magazine.com/food-drink/my-perfect-day/sami-tamimi
経済誌 “The Economist”が隔月刊で出しているライフスタイル誌“1843”のウェブサイトで、2016年5月3日(火)づけで掲載されていたものです。
彼が理想とする一日の食事はこんな感じでした。
<朝>
モロッコはマラケシュのヒップホテル、Riad Kaissの屋上テラスで新しい一日を迎えたい。
実はマラケシュは、食においてはさほど満足できる街ではない。
いいもの、ちゃんと人の手がかかった健康的なものを食べようとすると、誰かの家で食べるのであれば別だけれど、外食ではむずかしい。
そして、概してマラケシュの食事は見た目は美しいが、風味が乏しい、というのが、私の見解だ。
でも、例外はある。
それがここ、Riad Kaissの朝食だ。
誰かの家に招かれたような雰囲気で、ちょっとくたびれているところも含めて、いいところだなぁ、と思う。
彼らが作ってくれるのはモロッコのパンケーキ、ムセンメン。パイ生地が何層にも重なったそれは、ザクザクでモロッコのギー(バターミルクの一種)の風味もよく、食べ始めたらとまらない。
添えられるのはモロッコのバターと地元産ハチミツ。
ジュースは搾り立て。小ぶりなオレンジを使ったもので、新鮮ではっとするほどのおいしさ。
自家製ヨーグルトも忘れてはならない。まだ温かいのができたての証拠である。
そして飲みものはミントティー。ここで大事なのは砂糖が入っていること。砂糖の入っていないミントティーなんて、なもんである。
<昼>
ランチはイスラエルの首都、エルサレムの旧市街で摂るとしよう。
私が住んでいたのは、イスラエル第2の都市、テルアビブだが、エルサレムには、友人を訪ねたり家族に会ったりで週に一度のペースで通っていた。
(筆者注:サミ・タミミはイスラエル出身、イギリスを活躍の場とする)
まずはフムスから。もちろん既製品ではない。
食べるは、Abu Shukriで。
この店、近年では随分と観光客が増えたが、ローカル然とした佇まいは今もそのままだ。
フムスとともにやってくるのは、温かいファラフェル(ヒヨコマメまたはソラマメで作ったコロッケに似た食べ物)、サラダ、ピクルス、そしてピタパン。
これにレモン、パセリ、ニンニクがあれば申し分なし。
ところで、フムスについて。
昨今では、スプレッド状のものをなんでもかんでもフムスと呼んでいるが、それは間違いである、と声を大にして言いたい。
100%ヒヨコ豆で作ったものだけを、フムスと呼ぶのだ。どうか勘違いのないように。
そして、そのあと、ダマスカス門近くのJaffarという菓子屋に行くとしよう。
子どもの頃、私は友人とこの店によく来たものだ。
そこで、甘い甘いバクラヴァァやクナファ(ともに甘いペイストリー菓子)を分け合って食べるのがお決まりだった。
<おやつ>
特にこれといったものはない。とりわけ甘いものを頬張ったあとでは。
とはいえ、昼食に引き続き、エルサレムにいるのであれば、ゲストハウスのNotre Dameに行くのも悪くない。
このゲストハウスは、東エルサレムと西エルサレムの境、丘の上にあって見晴らしがよい。
バーに寄って、眼下に美しい旧市街を眺めながら、ワインとチーズで午後の時間を過ごしたい。
ワインは、地元産でなくフランスもので。
<夜>
夕食は東京で。
行くのは、有楽町はガード下近くにある、爐端本店。
時差ボケ、看板なし、加えて見つけづらい立地。
でも手がかりはある。野菜や果物が外に並んでいたら、そこは爐端本店だ。
店内は、誰かの家に遊びに行ったような雰囲気で、棚は陶器がうず高く並んでいる。
そのスタイルは古くもあり、新しくもあり。
炉端本店を仕切っているのは、ふたりの男性だ。
ひとりは英語ができる年配の男性で、もうひとりは相撲取りのように体格のいい輩。
この店にはテイスティング・メニューがある。
すべての料理が素晴らしいとは言わないが、経験として試す価値あり。
料理は和洋折衷で、サラダ、炙ったマス、刺身、鴨のオレンジ風味など。
よくあるこの手のほかの店と違って、典型的な日本料理、ではない。
でも、だからこそ、そこがいいのだ。
パートナーだったり、友達だったりと行って、夕食を通じて、料理や空間をシェアしたい、そんな店である。
〜〜〜〜〜〜〜〜
私、このオリジナル記事で、爐端本店というお店の存在を初めて認識しました。
有楽町なんてしょっちゅう行っていたのに! しかも幾度となく店の前を通っていたのに! 古い民芸風の店構えだなぁ、ってぼんやり眺めていたのに!
そして、いてもたってもいられなくなって知人と行きました。
確かに、ザ・和食ではありません。そして店名にあるものの、炉端焼きの店でもありません。
あるのは、こうきたか!という素材や調理法を組み合わせた創作料理の数々。
この料理群が、モダンスタイルってわけではないのですが、とにかく食べると新鮮な驚き!
それがカウンターの大皿にどどーんと並んでいて、お客はこれちょうだい、あれちょうだい、というスタイルです。
適当に盛って運んで来てくれ、量は多め。
このとき、私は2人で行ったのですが、あれこれ試すには量が勝り、一緒に行った方と次は頭数揃えて来よう!と話した次第。
オトレンギ。
リヴァプール・ストリート店はデリはあるものの歴然としたレストランスタイルですがあとのお店はイートインスペースは申し訳程度でデリのテイクアウェイ(持ち帰り)がメイン。
このデリが大皿をずらっと並べるスタイルで、多かれ少なかれ爐端本店からヒントを得たんだ!と思わず膝を打ってしまいました。
~~過去の関連記事も併せてどうぞ
○朝食@オトレンギ/Ottolenghi(ロンドン) → http://ricorice.exblog.jp/24033167/
○テイクアウェイ@オトレンギ/Ottolenghi(ロンドン) → http://ricorice.exblog.jp/18365143/
○ ロンドンの飲食店のトイレあれこれ → http://ricorice.exblog.jp/24935504/
○<イギリス料理・レシピ> フムス【Houmous】 → http://ricorice.exblog.jp/14715151/
○<イギリス料理・レシピ> シャクシュカ【Shakshuka】 → http://ricorice.exblog.jp/25641345/
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
・『イギリスの食、イギリスの料理&菓子』は“イギリスの食研究家”“食の編集者/ダイレクター/ライター”羽根則子のブログです。
・プロフィール ・活動内容 ・著書
(↑お手数ですが、それぞれクリックしてくださいね)
・お仕事・講演などのご依頼は、
chattexあっとまーくyahoo.co.jp までメールでご連絡を!