ロンドンを、もっと限定すればここ数年はサウス・ケン(ジントン)を拠点として動いています。
2014年秋、地下鉄のサウス・ケン駅を降りて、真っ先に目にした変化は、ラ・パティスリー・デ・レーヴ/La pâtisserie des rêvesができていたことでした。
ラ・パティスリー・デ・レーヴはフランス・パリに2008年登場したケーキ屋で、“夢のケーキ屋”の名前どおり、ピンクを基調としたドリーミングでちょっと宇宙遊泳しているようなインテリアが特徴的です。
グラスをひっくり返したような形の、大きなガラスのカバーで覆われたケーキのディスプレイがいくつも並ぶ様子がそれを物語っています。
(※2020年3月、日本で展開した店舗はすべて閉店。
パティシエの名を冠した店舗、フィリップ・コンティチーニ/Philippe Conticiniは東京・渋谷に店舗あり)。
ロンドンに誕生したのは2013年。まずはメリルボーンに。次いで、2014年夏、サウス・ケンジントンにオープン。
なんせここはフレンチエリアですから、ね。
駅界隈の店は、店の軒先にオープンエアスペースを作っていて、そこで食事やお茶をしている人の姿が恰好の広告となって、寄ってみようかな、という気分になります。
ただですね、私の場合、サウス・ケンジントンを拠点にしているため、朝出て、夕方〜夜戻るというパターンなので、私のお腹のタイミングとお店の開店とのちょうどいい時間に行けることがあまりなく。。。
ある日、朝遅く出ることがあり、でもちょっとお腹に何か入れておきたいな、ということがあったので立ち寄りました。
店内は通りに面してケーキのディスプレイが少々。
入って右がイートインスペースで12人ほど着席できるでしょうか。左手の大きなテーブルがケーキのディスプレイで、その奥の棚にケイクやパン・オ・ショコラなどのヴィエノワズリーが置かれています。
この店は大きくないので、ここには厨房スペースはなく、なされるのはせいぜい仕上げ程度ではないかと。メリルボーン店がセントラルキッチンとしての役割を果たしているのでは、と推測されます。
定番のタルト・オ・シトロンやサントノーレを、と思った矢先、目に入ったのがキャロット・ケーキ。
これってイギリス限定なのかなぁ、と思ってお店の人に聞くと、わからない、と(笑)。
こういう店って、なんていうのかなぁ、きびきびしてフレンドリーなお兄さんやお姉さんが働いていることが多いんだけれど、いたのはおっちゃん(失礼!)。
この方が、(ちょうど私がオーダーするときは、お店にほかのお客さんが2組しかいなかった)ということもあって、とても親切な方で、そのアクセントからフランス人。少し話して日本から来たことを知ると、本を持って来て、日本にも支店があるんだよ、と。本もゆっくり読んでね、とイートインしていた私のテーブルに残していったのでした(ほかのお店でもこういうことあったなぁ。荷物が増えることさえ気にしなければ、本、買おうか、って気になっちゃいますね)
オーダーしたのはキャロット・ケーキ4.60ポンド(テイクアウェイ/持ち帰りの場合は若干安くなります)とカフェ・ラテ3.50ポンド。
キャロット・ケーキは、上に厚みのあるアイシングが、(フォークででしょう)波形を描く形でのっており、カレ(真四角)の形をしています。
もっと主張する味わいを想像していたのですが、実に穏やか。甘さもスパイスも控えめ。生地はこまやかですんなり入っていきます。
おっと驚く、の対極で、自然に体になじんでいく。
たとえばドライフルーツをしのばせたりとか、アイシングのフレイヴァーをひねったりとか、ダイレクトに特徴づけるものはなくって、もちろん細かいところではしているのかもしれませんが、それを感じさせず、家庭菓子をプロがていねいにつくるとこうなる(これでもか、のこれ見よがしではなく、ね)、お手本のようなお菓子でした。
では、果たしてこれが私好みか、と言われるとむずかしいところで、確かに上質なお菓子ではあるのですが、もう少し生地がばさっとしていたりとラフなところがある方が、キャロット・ケーキの場合はしっくりきます。
それは私の中でキャロット・ケーキにおいてはっきりしたイメージがあること、そして嗜好によるものです。
ただ、こういう真っ当なアプローチもありだなぁ、と思ったのでした。
先のおっちゃんとの会話でうろ覚えで申し訳ないのですが、ヴィクトリア・サンドイッチやスコーンもあるって言っていたような。。。(ほかのイギリス菓子だったかな?)
なので、キャロット・ケーキ然り、ヴィクトリア・サンドイッチやスコーンにしても、イギリス限定でなく、パリや日本のお店にあるとしても、それはイギリス人マーケットを据えていることが歴然としていますね。
同時期に、同じくフランスからやってきたべーカリーのポール/Paulでも、キャロット・ケーキを宣伝しているのを目にしました。これも間違いなくイギリス人対策でしょう。
食器も白地にテーマカラーのピンクを組み込んでいるのですが、カップやティーポットのそれは印刷ではなく、ピンクの部分ははめこみになっているってこと。
お金(&手間)かかってんなぁ〜。
tue 23/09/14
追記: 2016年3月、メリルボーンおよび、上記サウス・ケンジントンのラ・パティスリー・デ・レーヴは両店とも閉店しました((↓)すごい皮肉なタイトルだなぁ。。。)。
La Pâtisserie des Rêves when the dream turns into a nightmare
http://franceinlondon.com/en-Article-1196-La-Ptisserie-des-Rves-when-the-dream-turns-into-a-nightmare-EconomyPolitics--baking-thierry-teyssier.html
~~過去の関連記事も併せてどうぞ
○<レシピ>キャロットケーキ【Carrot Cake】 → http://ricorice.exblog.jp/17561422/
○ロンドンのケーキ屋さん&パン屋さん・ベスト50 → http://ricorice.exblog.jp/22928773/
○ロンドンで食すべきケーキ・ベスト10 → http://ricorice.exblog.jp/22815600/
○ロンドンのケーキ屋さん・ベスト5 → http://ricorice.exblog.jp/22726539/
○BBCアメリカが選ぶロンドンのケーキ屋さん・ベスト10 → http://ricorice.exblog.jp/22666119/
○イギリスのクラシックケーキ・トップ10 → http://ricorice.exblog.jp/20640322/
○イギリス人の好きなティータイムのお菓子 → http://ricorice.exblog.jp/19762032/
(↑104の英国お菓子ストーリーを詳しく紹介しています!)
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
・『イギリスの食、イギリスの料理&菓子』は“イギリスの食研究家”“食の編集者/ダイレクター/ライター”羽根則子のブログです。
・プロフィール ・活動内容 ・著書
(↑お手数ですが、それぞれクリックしてくださいね)
・お仕事・講演などのご依頼は、
chattexあっとまーくyahoo.co.jp までメールでご連絡を!