このイングリッシュワインが世界の表舞台に登場したのは、1990年代とごく最近のことです。
しかし、実は長い長い歴史があります。
イギリスでワイン造りが始まったのは、もっとも古い記録で1086年。1066年のノルマンディー公ウィリアムによるイングランド征服により、大陸からイングランドに移住した人たちによってワイン造りが本格化したことによります。
でも、実はその前からワイン造りは試みられていたのでは、とされています。
というのも、古代ローマ時代のブドウ畑の跡は発見されているから。ただし、ワインが造られていたことを証明する決定的な証拠はなく、“古代ローマ時代にイギリスでもワインが造られていたのではないか”という憶測にとどまっています。
ただし、自国でワインを造ったかどうかはわからないものの、ヨーロッパ大陸からワインを輸入したことは明らかになっており、ワインを楽しむ文化そのものは昔からイギリスにはあったのです。
そうして、先に述べた、1066年が契機となって、イギリスでのワイン造りは本格化します。
当時、ワインを造っていたのは聖職者たち。ヨーロッパ大陸からやってきた聖職者たちにより、ブドウ栽培やワイン造りの技術がもたらされたのです。
このワイン醸造に精を出したのは聖職者たちだけではありません。貴族たちも城の周りにブドウ園を造ったとされています。
あまり上質なワインが造られていたとは言えないものの、それでもこの頃、イギリスでワインが造られるのは、そう珍しいことではなかったことが分かっています。
しかし、そういったイングリッシュワインのシーンが一変するのは、1553年以降。当時の王、ヘンリー8世がアン・ブーリンと結婚するためにイングランド国教会を誕生させ、ローマ・カトリックを見切ったことが原因です。
そう、宗教改革です。
宗教改革により、イギリスにワイン醸造をもたらしたローマ・カトリックの修道院や教会は解体され、それに伴い、ブドウ畑は荒廃し、ワイン産業は衰退します。
ようやく、イギリスでワイン造りが脚光を浴びたのは、第二次世界大戦後の1951年のこと。
ギー・ソールズベリー・ジョーンズ卿が、イングランドはハンプシャー・ハンブルドンにセイヴァル・ブラン種を植えた商業規模のブドウ園を築いたことによります。
これがきっかけで、イングランドでのワイン造りに乗り出す企業が増えたものの、なかなかうまくいかない時代が続きました。
なんとかワインは造れたとしても、生産規模は非常に小さく、商業ベースにはほど遠いものでした。
事態が好転するのは1997年。
この年のIWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション。IWSCはInternatinal Wine and Spirit Competitionの頭文字をとったもの)で、1992年ヴィンテージのナイティンバー・プルミエ・キュヴェが金賞を受賞したことによります。
このワインは、サセックスのワイナリー、ナイティンバー/Nyetimberの最初のヴィンテージワイン。
ナイティンバーが設立されたのは1988年。以降、数年は試行錯誤の繰り返し。納得のいくものがようやくでき、出品したら、いきなりの好評価を得たというわけです。
その翌年も、ナイティンバーのスパークリングワインは、IWSC金賞を獲得。加えて、インターナショナル・スパークリング・ワイン大賞にも輝きました。
イギリスのワイン産業は年々大きく発展し、今も進化を続けているのです。
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・『イギリスの食、イギリスの料理&菓子』は“イギリスの食研究家”“食の編集者/ライター/アドバイザー”羽根則子のブログです。
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