コッツウォルド・ヒルズは羊で知られる。
グロスターの素晴らしい教会は、羊毛業が繁栄し潤ったことによるものだ。
羊肉は料理にも頻繁に使われ、
中でも興味深いのは、グロスター・スクォブ・パイである。
スクォブとは小鳩の意味で、
ほかのエリアのスクォブ・パイが文字通り、小鳩を使うのに対し、
ここで使われるのはラム。
スパイス類やリンゴで風味づけしたラムが使われるのだ。
羊がよく食べられていることを示すひとつの例だろう。
豊穣な大地は果物にも有効だ。
リンゴ、洋梨をはじめ、プラムはこの地方の特産品。
とりわけ開花の時期は、絵画のような美しい風景が広がる。
秋の収穫時には、どうしても木から自然に落ちてしまうリンゴがある。
そんなときは、豚を放って食べさせていた。
もっとも、今ではあまり行われないようだが。
豚といえば、加工品もよく作られ、
ミッドランズ・カットと呼ばれるベーコンが名物だ。
ヘレフォードシャーではリンゴから造る酒、サイダー醸造が盛んである。
洋梨も同様。洋梨の酒、ペリーもこの地方で造られる。
これらのフルーツ酒は、ノルマン・コンクエストの際、イングランドにもたらされた。
リンゴから造るサイダーと異なり、洋梨の場合は醸造に適した種は限られる。
そのためかペリー醸造の規模は大きくはない。
ソフトフルーツ栽培も熱心で、そのひとつがグーズベリー。
グーズベリーを使ったお菓子にオールドベリー・タートがある。
よく似たものにノッティンガム・パイがあるが、
ノッティンガム・パイがアップル・ジェリーを使うのに対し、
オールドベリー・タートの場合は赤ザラメ糖をふりかける。
熱いうちに、冷たくてもおいしい一品で、
カスタードかクリームを添えて食べる。
(・・続 く・・)
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