イギリスの料理家として真っ先に名前が挙がっていたのは、
デリア・スミスと言っても過言ではないでしょう。
1971年に初めての本『How to Cheat at Cooking』を出版、
その後、最新の『Delia’s Happy Christmas』まで
20冊以上のレシピ本を刊行、
トータルで今日までに2千万部以上の売上げを誇っています。
初のテレビ番組は1973年制作の『Family Fare』。
コンスタントに番組を持ち、
いわばマスメディアの隆盛とともにスターダムにのし上がったとも言えます。
私自身、何冊か本を持っていますし、
イギリス人と話していると、家庭料理の第一人者として彼女は別格なんだな、
というのをつくづく感じます。
よく、栗原はるみさんが日本のデリア・スミスみたいに例えられますが、
私は小林カツ代さんの方がより近いかな、と思っています。
現在、デリア・スミスは自身のウェブサイト、そしてオンライン料理教室に
仕事の軸を置いています。
ちょっと古い記事ですが、
2013年5月14日(火)づけのイギリスの新聞、daily telegraghに
本を眺めているだけでは料理の腕は上達しない
Delia Smith: You can't learn cooking from cook books
http://www.telegraph.co.uk/foodanddrink/foodanddrinknews/10054338/Delia-Smith-You-cant-learn-cooking-from-cook-books.html
と題したデリア・スミスのインタビューがありました。
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レシピ本を開いて、実際に台所に行って、
分からないところを誰かに教わる環境にいないと、
料理の技術を体得することはむずかしい。
今は、テレビにしろ本にしろ情報もたくさん出回っているし、
実際にいろんなところに行ったりして、一般の人も食の知識は豊富。
でも、だからと言って、そんな人たちが、
基本中の基本、ごくごくシンプルなオムレツを焼くことができなかったりするし、
知識も持ちえていないなんてことはザラ。
一見イギリスの食事情は華やかになったけれど、
家庭料理に関して言うと、瀕死の状況にあるのかもしれない。
キッチン用品店が盛況だとは聞かないし、便利な道具はたくさん出回っているものの、
結局は家庭で料理をするってのは億劫なのよ。
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このあたりは、ふむふむ、なのですが、
この記事を読んでようやく、
デリア・スミスがなぜテレビや出版といったインターネット普及以前の、
既存のメディアの第一線から退いたのか理解できた気がしました。
それまで、年齢的にもそろそろリタイアなのかな、
と思っていたらそうではなく、仕事の軸足を移すということだったんですね。
オンライン料理教室のメリットをいつでも見たいときに見られる
(動画を利用して、料理レッスンを行っています)とし、
そう、確かに彼女のウェブサイトは充実しているのです。
それまでずっとマスメディアの中にいて活躍していた人が
自身のメディアに大きく舵を切ったというのは、
非常に示唆的な気がしてなりません。
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