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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


by ricoricex

ロンドンのモダン住居建築ツアー 02 ~ローンロード・フラッツ~


今秋、イギリス訪問の際に、大変好運なことがありました。
それは、ナショナル・トラストが開催した
ロンドンのモダン住居建築ツアー
Road Trips by Routemaster: Visions of Utopian Living with Tom Cordell
に参加できたこと。
UTOPIA LONDON”という建築映画を監督したTom Cordellと一緒に
ユートピアを目指して作られたロンドンの住居建築を巡るツアーで、
ロンドンのモダン住居建築5カ所を、
かつて郊外を走っていた緑色の2階建てバス、ルートマスターで回りました。

(このツアーに参加できたいきさつについては、前回の
 ロンドンのモダン住居建築ツアー 01
 http://ricorice.exblog.jp/22471253/

 からどうぞ。)
ロンドンのモダン住居建築ツアー 02 ~ローンロード・フラッツ~_e0038047_826436.jpg
ロンドンのモダン住居建築ツアー 02 ~ローンロード・フラッツ~_e0038047_8212338.jpg
ツアーはローンロード・フラッツに
10:30集合からスタート。
最寄駅はベルサイズ・パーク駅。
駅を出て少し歩いたところに
突如として白い建物が現れます。
これこそがローンロード・フラッツ/The Lawn Road Flats。

ローンロード・フラッツは1934年にオープンした集合住宅で、
イギリス初のモダン・フラッツであり、
イギリス初のインターナショナルスタイルのひとつ。
2000年に登録建築物として最高級のグレイド1を与えられ、2004年に完全復活。
現在も住居として使われているので、そこは見学できませんでしたが、
1階はギャラリーとなっており、
ローンロード・フラッツやモダン建築に関するパネルや、
当時の住居空間の様子を見学できたりと、非常に興味深い。
ちなみにこのギャラリーは週末オープン(冬季休業)していて、
誰でも訪問できます。
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ロンドンのモダン住居建築ツアー 02 ~ローンロード・フラッツ~_e0038047_828573.jpg

建築デザインはウェルズ・コーツ、施主はプリチャード夫妻。
この建物に当時のクリエイティブな人たちが入居していました。
バウハウスのスターのグロピウス、マルセル・ブロイヤー、ラズロ・モホイ=ナジ、
一般的な知名度があるところではアガサ・クリスティもここに住んでいました。
建物内のレストランバーは芸術サロン的な役割を果たし、
ヘンリー・ムーアやベン・ニコルソン。バーバラ・ヘップワースらが常連だったとか。

施主のジャック・プリチャードはナチスからの亡命者、
とりわけ建築家の援助に関わっており、
一時期、ドイツや東欧からの亡命者用の部屋も確保されていたといいます。
ここまでは、さもありなん、と思える話なのですが、
驚いたのは、ローンロード・フラッツをソ連のスパイが住居として使っていたということ!
アートと政治。
う〜ん、これまで単に建物に興味をとられていたけれど、
ローンロード・フラッツの場としての役割も俄然気になり始めました。

ローンロード・フラッツはアイソコン・ビルディングとも呼ばれ、
それはアイソコン社の事業だったから。
そのため、先に述べた1階のギャラリーは、
アイソコン・ギャラリーと呼ばれます。
後にアイソコン社は、集合住宅から家具へと事業の軸足を移します。
家具メーカーとしてのアイソコン社の代表的な作品に、
ロングチェアーがあり(デザインはバウハウス出身のブロイヤー)、
シャルロット・ ペリアンがデザインしたシェーズ・ロング
(フランス語でまさに“ロングチェアー”!)に
素材の違いこそあれ、アプローチが似てるなぁ、と思うのですが
(それまでもロングチェアーというのはあり、このタイプのイスの総称でもあるわけですが)、
時代のセンスが向かう空気と、実際に作家の交流があったからなのかもと感じたりして。
ロンドンのモダン住居建築ツアー 02 ~ローンロード・フラッツ~_e0038047_8294493.jpg

私は、コンクリートが夢を見ていた時代のモダン建築がとても好きなのですが、
周囲に共有できる人がほとんどいなくって、
それは私が建築の専門でないからということもあるのでしょうが、
周りにもそういう人がほとんどいない。。。
逆に言えば、だからこそ、一般的なところとしては今の時代ですらそんな状況ですから、
当時の評価というものは相当ひどかったんだろうなぁ、と思いを馳せるのです。
現に、ローンロード・フラッツは
1946年、ホライゾン・マガジンの「最も醜い建築コンペ」で2位だったわけで。

ちなみに、ローンロード・フラッツの建物の色は白に見えますが、
実はピンク。
近くに行って初めて認識できる程度の淡い色です。
ロンドンのモダン住居建築ツアー 02 ~ローンロード・フラッツ~_e0038047_830543.jpg

ではでは、ツアーの次の訪問場所については、次回。

sat 27/09/14



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by ricoricex | 2014-10-23 00:00 | 建築&デザイン