良質な牛乳からは、さらにチーズやクリームが作られ、さまざまなメニューに使われる。
なかでもエレガントな一品に、18世紀にバースで食されていたデザート、
ダマスク・クリームがある。
これはジャンケット、凝乳に甘味をつけたものをベースにしたデザートで、
ダマスクの名の通り、バラが高貴に香る1品である。
作り方は次の通りである。
クリームにメースとシナモンを加え、
これらのスパイスの香りがクリームに移るまでゆっくりと火にかける。
冷めたらレンネットを加えて固める。
その上に、ローズウォーターと砂糖を加えて軽く泡立てたウィップクリームをおき、
ダマスク・ローズの花びらを飾れば、ダマスク・クリームのでき上がりだ。
クリームが使われるのは菓子だけではない、料理にも使用される。
とりわけ豚やターキーのキャセロールに加えると、
リッチでスムーズな味わいとなる。
サマセットの乳製品として一番よく知られているのは、
チェダー・チーズと言っても過言ではないだろう。
18世紀にはすでのその名声を獲得しており、まがい物も出回っていたほどだ。
1840年にはチェダー・チーズはヴィクトリア女王の結婚式で献上までになった。
その後もチェダー・チーズ製造は成長を続け、
1939年には500を超えるチーズメーカーがあったが、
現在では農家は少なくなり、今ではほとんどが工場産になった。
オーストラリア、ニュージーランド、カナダなど、世界各地で作られている。
工場製チェダー・チーズは、スライスしてパンやピクルスと一緒に食べたり、
おろしてサラダにふりかけたり、と普段の生活でおおいに活躍してくれる。
工場製チェダー・チーズは手軽に楽しめるよさがある一方で、
伝統的な製法で作られるファームハウス・チェダー・チーズは、
本物志向のグルメ向けと言えるかもしれない。
15カ月など長期にわたって熟成させたファームハウス・チェダー・チーズは、
どっしりとした旨みとコクがあり、芳醇という言葉がふさわしい。
チェダー・チーズのお膝元であるサマセットでは、
毎年9月下旬に、フロム・チーズ・ショウが開催される。
いわゆるフードショウで、近年はより一般の人も楽しめる内容になったが、
優良生産者によるチーズセレクションは非常に質の高いものである。
豊かな牧草地、肥沃な土壌、温暖な気候、そして豊穣の海、
サマセットには自然の恵みをいとも簡単に享受できる環境が見事に揃っている。
(終わり)
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