イギリスのテレビ番組“The Great British Bake Off”。
今回より、BBC2からBBC1に移り、
その視聴率の高さは、ここ5年でトップだとか。
番組が放送された翌日には、メディアに軒並み取り上げられ、
人気の高さ、そして注目の高さがうかがえます。
(今回の“The Great British Bake Off”シリーズ5開始前に
どのようにメディアに取り上げられていたかについては、こちら(↓)を。
http://ricorice.exblog.jp/22227622/)
取り上げられ方としては、番組の内容そのものをはじめ、
そこから派生して、ベイキング(お菓子やパン作り)の話など、実にさまざま。
その件数があまりに多く、いちいち追っているわけではありませんが、
ときどき、ヘッドラインにつられて目を通すと、おっ!と思えるトピックに出合えます。
そのひとつが、イギリスの新聞、
The Independentにあったこんな記事。
パン作りのコツ
Top tips and recipes for making bread
http://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/features/great-british-bake-off-top-tips-and-recipes-for-making-bread-9678874.html
かいつまんで内容を以下に紹介します。
01.湿度は高ければ高いほどよい
パン生地はベタベタしているのがよい状態。とろんと流れるぐらいがベスト。パン生地と言えば比較的しっかりとしたかたさの生地を思いがちだが、むしろケーキ生地に近い。
02.暖かい場所で発酵させない
パン生地は冷たい状態で発酵させるのがよい。低温でゆっくりと発酵させることで、温かい状態では発生する発酵臭が出にくくなる。
03.必ずしもこねる必要はない
肝心なのは、こねることではなく、どのようなパンを作りたいか。食パンやロールパンでは、こね方やこねる時間、そして休ませる時間が変わってくる。どのようなパンを作りたいか、そのためには生地の状態をどうもっていくかをあらかじめ知っておくこと。
04.レシピに従う必要はない
小麦粉のパッケージにはたいていレシピがついているが、これは無視してよい。レシピが載っている理由は別のところにあるのだから。
おそらく今の家庭での一般的なパン作りの概念を覆すような内容ではないでしょうか。
個人的には、ここで書かれている内容は、あくまで一例、すべてではないと感じます。
低温発酵は、確かに、いい。
実際に、何年も前からパン屋さん取材で(日本での話です)、
そこには低温発酵、それによるオーバーナイト製法(一晩寝かせておくやり方)を
取り入れているところもあり、それらの店にうかがった私の経験から言うと、
メリットとしてはパン生地に負担があまりかからないことと、
結果、上記の記事の中で言われているように発酵臭がしにくく、
粉の風味が活きるパンになります。
あと、生地を冷蔵庫に入れておいて、作業をしたいときに取り出してできる、という
自分の動きにパン作りを合わせられるというのはありがたい。
なので、朝出かける前に生地を作って、冷蔵庫で低温発酵させておけば、
帰宅してパンを焼ける、ということが可能になります。
でも、同時にデメリットもあって、まずは冷蔵庫の場所をとること。
家庭で作るパンの量はたかが知れているとはいえ、
パン生地の入ったボウル1つなりを冷蔵庫に入れるためには
スペースを確保する必要があります。
そして私の場合はこれが大きいのですが、
取りかかりから焼成までにとにかく時間がかかるのが欠点。
夕食に食べたいから夕方の早い時間から作り始める、ということはまず不可能なのです
(私がよく作って食べる丸パンは、3時間みておけば充分なので)。
ところが低温発酵だと、最短で半日後を食べることを想定して、といったスローテンポになり、
これが苦手なのですよ(計画を立てて、明日はアレ食べよう、ということがなく、
その時に食べたいものを食べたいので)。
なので、この記事で“パン作りのコツ”として挙げられている内容は、
もちろん、取り入れるのは大いにあり、
でもこれがすべてじゃない、という説明が必要では、と考えるのです。
プロだと、ああ、低温発酵ね、とあくまで製法のひとつと捉えるところを、
大半が知識がさほどない家庭の料理人の場合は、
これだけ読むと、パン作りってこうなのね、って思い込むこともあるんじゃないかなぁ。
ストイックにやることを否定しないし、つきつめる楽しさもあるけれど、
基本的には、パンに限らず、家庭で作るものって、理屈うんぬんよりも、
簡単で気軽に楽しくやりたいのですよ、
その結果、味や見た目が、100点満点中95点じゃなくても、
70点がとれるなら充分に及第点では、と思うのです。
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