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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


by ricoricex

イギリスの地方料理 ドーセット 03


ドーセットの温暖な気候は、羊の成育にも影響する。
すくすくと育つので、ほかのエリアよりも若いラムが市場に登場するのはそのためだ。
なかでも、ドーセット・ホーンはよく知られるドーセットを原産とする羊の種のひとつで、
やわらかい肉質とふわふわの羊毛が特徴である。

この地方では、ラムの尾はパイに用いられるのが伝統。
たとえば、ドーセット・ラム・クランブルはローストラムの余りをおいしく食べるのに有効だ。
ロング・パドル・ラムは、ウスターソースと一緒に煮込むキャセロール料理で、
料理名にも使われている“パドル/Puddle”という言葉、
パドルタウン/Puddletownやトルパドル/Tolpuddleなど、
ドーセットの村の名前でしばしば認めることができる。
これはこの州を流れるピドル川によるもの。
“パドル/Puddle”が“ピドル/Piddle”と言葉が若干違うのは、
ヴィクトリア朝時代にこの“ピドル/Piddle”という言葉が
おしっこの意味で用いられることが多かったことから、
“パドル/Puddle”に変えたという歴史があるためだ。
とはいえ、元の“ピドル/Piddle”の名を残している場所がないわけではない。
ピドルヒンドン/Piddlehintonやピドルトレントハイド/Piddletrenthideがそれである。
料理名にも使われており、その名もピドン・ベーコン・ケーキ。
ヴィクトリア朝時代にはいったん、パドン・ベーコン・ケーキとしたものの、
元に戻した珍しい例である。

ドーセットの内陸では、牛の育成も盛んである。
この地における牛肉の伝統的な食べ方は、ドーセット・ジャグド・ステーキ。
ステーキとはいうものの、ポート(ワイン)を使った牛肉とミートボールの煮込み料理で、
お祭りが町にやって来るときに作られた。
煮込んでおいて、最後にミートボールを加えればOKという代物で、
帰りの時間を気にしなくてもいいところが重宝されたようである。
ビーフ・オリーブは古いレシピで、
スライスした牛肉で具材を包む料理。
スワネージ鉄道の「Wine and Dine」イベントで提供されることもある。

シカ肉も昔から食べられて来た。
ひところはあまり見られなくなったが、
現在では再び、日常的にお目にかかるようになった。
シカ肉はキャセロールやソーセージの具材として使われることが多い。

これまでいくどとなくソーセージが出て来たが、
ドーセット・ソーセージと呼ぶ場合には注意が必要である。
なぜなら、ソーセージというものの、その実態はミートローフだからだ。
ドーセット・ソーセージは前日に作っておき、スライスしてピクニックに持参したり、
トーストにのせて前菜として食したり、
サラダと一緒にディナーで供したりするのに適している。
(・・続 く・・)

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前回までの“イギリスの地方料理 ドーセット 01&02”はこちら(↓)
イギリスの地方料理 ドーセット 01 http://ricorice.exblog.jp/22181386/
イギリスの地方料理 ドーセット 02 http://ricorice.exblog.jp/22207514/

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by ricoricex | 2014-07-30 00:00 | イギリスの地方料理