大部分は塩漬けにされ、大切な生活の糧となる
腐りやすい部位は、友人や近所の人に配ったり、
早めに食べ切るようにしていた。
足が早い部位は臓物。それに足や頭、尾など。
これらを調理するのはいささか面倒である。
腸類は、ひっくり返しながらしっかり洗ってから結んでゆでれば、
温かいままで、冷ましてからも食べることができる。
頬など頭の下の部分は、塩漬けのひとつ、バス・チャップにされる。
ほかの頭の部分は、いったん熱を通し、肉をこそげおとし、ゼリー寄せなどにされる。
足はゆで、冷ましたものを食べる。
ゆで汁もムダにはしない。
ゼラチン質が多く、冷めたら固まるのをとっておいて、
ポークパイの風味づけに使う。
脂身は大事に保管される。
調理過程で出るかけらも大事にとっておく。
タルトに加えるとクリスピーな焼き上がりとなる。
血はブラック・プディングになるし、
脂身と肉を少々、オートミールを使えばホワイト・プデイングになる。
(筆者注:ブラック・プディングはソーセージの一種。
フランスのブーダン・ノワール、ドイツのブルートヴルストのようなもの)
どちらもゆでて、ベーコンでこんがり焼いて食べるのがおいしい。
ほかのくず肉はソーセージやパイの具に使われる。
そう、ムダなものはまったくなく、余すところなく食べられるのだ。
そのため、豚で食べられない箇所は鳴き声だけだ、とも言われている。
そんなわけで、ファゴット(ミートボール)は、
ウィルトシャーの名物料理のひとつ。
さまざまなタイプがあるが、レバーや肺臓などのくず肉を、
タマネギ、ハーブ、パン粉と混ぜ合わせて作るのが基本だ。
(筆者注:ファゴットはfaggot(s)と綴る。
この場合、同じ単語の別の意味ではない、念のため)
ファゴットには束という意味がある。
というのも、ファゴットは、豚の胃の周りにある網脂、
クレピーヌに包んでいくつも作られるから。
クレピーヌで包むのは、旨みを加えることと、そして何より乾燥を防ぐため。
食べるときは、こんがりと焼き色がつくまで焼いてからサーヴする。
セイヴォリー・ダックと呼ばれるファゴットは、温かい状態でも冷たいものも食される。
温かくして食べるときは、グリーンピースを添えるのが鉄則だ。
(・・続 く・・)
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