州としては、イースト・サセックスとウエスト・サセックスに分けられる。
中世にはサセックス王国であったこの土地は、
歴史的遺産が多く、どこを切り取っても風光明媚、
そして上質な食を生み出す、実に豊かなエリアである。
サセックスの食として、まず筆頭に挙げられるのは畜産業。
とはいえ、現在では衰退の一途をたどっているが。
ともあれ、サセックスが牛や羊の育成に適した土地であることに異論の余地はない。
かつてサセックスの海の恵みとしては、
海草の一種、シーケールが収穫されていた。
しかし、環境の変化により、現在では見ることはほぼ不可能である。
そんな中、今もサセックスが産地と言って差し支えないのは、
ヤマウズラなどのゲーム/ジビエだろう。
家畜の群れ、それはサセックスではごく日常的な光景である。
そこには、極上として知られる、サウス・ダウンズの羊も含まれる。
なかでも純血統種として名高いのは、ロムニー・マーシュであろう。
ロムニー・マーシュは、長い尾と顔が白いのが特徴。
乳や肉は食用として、またウール用として交配された。
ロムニー・マーシュが育成されるのは、海に近いケントとの州境近くで、
ときに吹き飛ばされそうになるほどの風をものともせず、頑強に育つ。
そして、潮を含む牧草地の草をエサをして育ち、
このことが肉に旨みを加える一助とされている。
サセックス・スリコープ・チーズは、羊の乳でできた無殺菌のソフトチーズで、
このチーズには長い歴史がある。
もともとは牛乳で作られていたサセックス・スリコープ・チーズは、
1895年に出版された『Law's Grocer's Manual』によると
以下のように定義されている。
“サセックス・スリコープ・チーズとは牛乳で作られるソフトチーズのこと。
製造過程で、しばしクリームが加えられることもある。”
そう、サセックス・スリコープ・チーズは、もともとは牛乳が使われていたのだ。
では、なぜ現在では羊乳が使用されているのか?
これには理由がある。
イギリスでは、第二次世界大戦の食糧配給の際にチーズが供給された。
当然、質よりも量。サセックスのチーズ製造もその例外ではなかった。
その後、再びまっとうなチーズ製造が行われるようになったときに、
牛乳ではなく羊乳を使うようになり、それが一般化したのが、
現在のサセックス・スリコープ・チーズである。
(・・続 く・・)
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