海岸沿いの沼沢地、ロムニー・マーシュでは、
稀少な羊が作られ、その名もロムニー・マーシュ。
この地方は、海からの冷たい偏東風が吹き、
その土地の草を食んで育った羊は、独特の素晴らしい風味がある。
羊は早春に出産シーズンを迎える。
そうして成長期である夏に、豊かな牧草を食べて育つ。
この羊は、伝統的なケントの料理、ラム・テイル・パイに使われる。
このメニューが作られるのは出産シーズンのみ。
なぜなら、若く新鮮な肉を使う必要があるからである。”
尾は湯通しにし、皮をはぎ、根菜と一緒に調理される。
そして、グリーンピースやゆで卵、ミントやパセリなどと合わせ、
ショートクラスト・ペイストリーで覆って焼き、パイとして完成される。
(筆者注:ショートクラスト・ペイストリーはイギリスで料理や菓子に使う生地のひとつ)
ケントは海沿いにあるので、魚介類にも恵まれている。
カレイがよく捕れ、なかでも高級食材として名を馳せるドーバーソールは
ケント自慢の魚である。
ところが、実際にはドーバーソールはケントで捕れるわけではない。
ドーバーには漁港があり、ここで質のよいドーバーソールが水揚げされ、
すぐさまロンドンへと運ばれたので、ここで捕れるように思われるのである。
高級白身魚のひとつであるドーバーソールは繊細は味わいがあり、
その持ち味を活かすために、あまり手を加えない調理法が好まれる。
一般的なのは、バターで焼き、レモンを添えて供されるスタイルだ。
海沿いの町ではどこでも、新鮮な魚介類を直接買い求めることができる。
たとえばカキ。ウィッタブルはイングランド屈指のカキの町である。
老舗のウィーラーズ・オイスター・バーが創業したのもこの地だ。
カキは、Rの付く月に食べるとされ、ウィッタブルのカキも然り。
現在は輸入などによって年間を通してカキを食べられるが、
決まった期間にだけ食べられるウィッタブルのカキは味わいが格別だ。
ところで、カキ漁師たちの朝食をご存知だろうか。
しっかり焼いたベーコンに、殻を外したカキをのせ、さらに3〜4分焼き、
これを厚く切ったパンと一緒に食べる。
そして、濃い紅茶で流し込む、といった具合だ。
(・・続 く・・)
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前回までの“イギリスの地方料理 ケント 01&02”はこちら(↓)
イギリスの地方料理 ケント 01 http://ricorice.exblog.jp/21257294/
イギリスの地方料理 ケント 02 http://ricorice.exblog.jp/21290139/
これまでの、“イギリスの地方料理 ロンドン”
“イギリスの地方料理 バークシャー”
“イギリスの地方料理 バッキンガムシャー、ベッドフォードシャー、ハートフォードシャー”
“イギリスの地方料理 サリー”
はこちら(↓)
http://ricorice.exblog.jp/i28/
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