食材、とりわけ野菜や果物の多くは輸入品に頼っている今でも、
ケントは果物やビールのホップの産地として、その役割を担っている。
温暖な気候で雨量が少なく、肥沃な土地は、園芸にうってつけで、
少なくともチューダー朝以降は、
リンゴ、梨、プラム、チェリーなどの果物の産地として知られる。
ケントを代表する特産品のひとつ、チェリーは
ローマ人によってイギリスにもたらされ、ケントで盛んに栽培された。
チェリーは大きく2種類に分けられる。
ひとつはモレロやケンティッシュロードといった酸味の強いタイプで、
調理、缶やボトル詰めなどの加工品、チェリーブランデーの原料などに使われる。
もうひとつは、甘いタイプで、デザートチェリーとして生でそのまま食べられる。
盛んだったケントでのチェリー栽培だが、
ここ半世紀の間に、生産は激減。
従来の農業の重労働のため、従事者が減ったことがその原因である。
しかしながら、チェリーを使ったメニューは健在だ。
たとえば、チェリー・バター。
(筆者注:バターはbatterと綴り、生地の意味)
文字通り、チェリーを使った生地で、プディングに使われ、
フランスからノルマン人により伝わったとされる。
リンゴは今もケントで栽培が盛んである。コックス(・オレンジ・ピピン)やブラムリーといった品種は、
このエリアで植えられた。
これらのイギリスでおなじみの品種だけでなく、
ウースター・ペアメインといった古い品種もケントでは見られる。
古い品種は、スーパーマーケットで見慣れたリンゴと比べると、
形は不揃いで不格好である。
しかし、いかにもリンゴを感じさせる独特の風味や食感は
一度食べたら忘れられない。
規格や流通面の問題があるのだろうが、こういったリンゴ品種が、
一般になかなかお目にかかれないのは、非常に残念である。
ヘーゼルナッツ、ヘーゼルナッツの一種であるコブナッツやハシバミも、
ケントで栽培が盛んである。
これらのナッツは保存してクリスマスに食したり、
乾燥させたり、砕いたりして、ヘーゼルナッツ・メレンゲに使われたりもする。
(・・続 く・・)
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