今日のメニューはTarte aux poires(洋ナシのタルト)かTarte aux pommes(リンゴのタルト)で、どちらかを選択。私は洋ナシを選びました。パンや野菜炒めの味つけもそうですが、ときどき好きな素材が選べます。これ、選ぶ材料で若干作り方が違ったりするので、アレンジを知るにもちょうどいい。
実習前にパイ生地のおさらい。これまでキッシュなどに使うショートクラスト、パイ包みに使ったフレーキー・ペストリー、本日のようなお菓子用のパート・シュクレ、と作ってきて、それぞれ材料の配分、特徴が違う、と。そして、レシピは分量で覚えるのではなく割合で覚えると応用がきく、と。まあ、当然ですよね、数学の方程式みたいなもんです。例えば、ヴィクトリアン・サンドイッチ、主な材料はすべて等分量です。ショートブレッドの場合は、主原料の割合が1:2:3。また、パート・シュクレ、小麦粉2に対しバターが1、あとはシュクレ(フランス語で砂糖を加えた、つまり甘い)とあるように砂糖と卵の黄身を加える、ほかのパイ生地は水を加えるけどパート・シュクレは例外で加えない、と。まあ、確かに原理を覚えれば簡単です。でも、その原理を覚えるのが大変なわけでして。とはいえ、パイ包み用のフレーキー・ペストリーは水分が多め、なぜか、中にムスリンなどが入っているので湿度を保つため、です。と、論理的といえば論理的なわけで、でもそこに到達するには、やはりしっかり理解していないと元も子もないんだよなぁ。
いざ、実習。洋ナシのタルトなので、洋ナシをのせて焼くのですが、チューターのインストラクションは、ちょっと私には物足りない。頭を残してナイフを入れて扇状に広げて置くのですが、うーん、これは見せてもらったものよりもっと少し薄く切って、スライドさせていった方が美しいに違いない、とアレンジ。こういうことは得意なんですよねー。仕上がりは上々。またしても器用ねーと言われ、上機嫌です。
薄くスライスして少しずつずらして広げることを、閉まったベネチアンブラインドのように、とレシピにはあります。ベネチアンブラインド? 何それー?と、訊くと要するにブラインド(カーテン)のこと。あー、確かに。でも、ブラインド(カーテン)のことベネチアンブラインドって言うのねー、これも知らなかったのです。
本日はRは用事があってロンドンには戻らない、ということで、C2に駅まで送ってもらう。毎日ワイト島(!)から通っているBeも一緒。Beは朝はC1が駅で拾って、帰りはC2が駅へ送っていくので、便乗させてもらいます。Beとは途中まで一緒(彼女はウォータールーまで行かず乗り換え)。喋っているうちに、やはりネイティブ独特の言い回しとかがむずかしいとかっていう話になり、あっ、そうかもね、とBe。そこで教えてもらったのが、魚屋はfishmonger。fishshopと言うこともあるけれど、こっちの方がまだまだ健在。でも今は魚屋自体が珍しくなったので、若い子は知らないかもねー。mongerは〜屋みたいなもんだけど、肉屋には使わない。あー、金物屋のmongerだわね、ironmongerだもん、mongerの使い分け? なんだろーねー、と。お酒を扱っている店はoffie。off-licenceのoffをもじったものだわね、と。オフィーだのテリー(telly: テレビのこと)だのエリー(エルサイズのこと)だの、ィーを付けますな。そういえばバターがべたべたしている、バターが多いことはbutteryだし、脂が多いときはfattyで、油が多いときはoily、脂っこい、脂でギトギトした感じはgreasyだし。なんでもィーを付けて形容詞です。さて、buttery、fatty、oily、greasy。これらの言葉、日本語だと漢字を使い分けるにしても、すべて“あぶらっこい”で集約されちゃうけど、英語はしっかり使い分けるわけで。やっぱり、頻度の高いものは語彙も豊富だなぁー、と改めて感じたりします。
今日のお持ち帰りはパン、チキンレバーパテ、メルバトースト、ミネストローネ、洋ナシのタルトと、まるでケータリングの人のように荷物が多い。ウォータールーからジュビリーラインに乗り、ウエストミンスターで乗り換えるのですが、ジュビリーラインは私のお気に入りなのです。近未来的な駅(そういう本が出ていて、貰ったことがあります)が多く、ウエストミンスターも然り。気分は『未来世紀ブラジル』です。建築家は違いますが、メタリックな素材を使っているので(そういう申し合わせがあったのかしら)、何となく統一感があります。横浜のみなとみらい線の駅も、個々の駅は頑張っているけれど、全体の統一感に欠ける点が残念。
帰宅して持ち帰ったミネストローネとパンで昼食。ちょっとのんびりして、ハイストリート・ケンジントンをうろうろした後、買い出しへ。小ぬか雨で、なんだかぞくぞくして来た。あっ、また風邪ひくかも、やばいかも。その帰り、Eさんにバッタリ。彼女は夕食に出かけるところで、帰りしな、持ち帰りを取りに寄る、と。パテとタルトで夕食。風邪薬も飲んでおく。22:00ごろEさんがやって来て、ちょっとお茶をして、この日は終わり。