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イギリスの食、イギリスの料理&菓子 ricorice.exblog.jp

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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


by ricoricex

11日目<2007年11月5日(月)>


Pilmicoで待ち合わせて、Rに学校へ連れていってもらう。RはMP(member of parliament:国会議員)で、日本は景気が悪いだの、イギリスの好景気は実態のないまやかしだの、そういう話をする。議員だけに日本の社会情勢にも詳しく、少子化社会の話題になったときに、まあ、要するに政府はtax payersがたくさん欲しいってことで、それで躍起になってんのよ、と言うと、イギリスの少子化だけどそれはあまり問題視されてない、なんでか分かる?と。確かに子供自体は少ないけれど、世界中からたくさんの人(今だとEUに加盟して日の浅い東欧からが多い)が労働を求めてこの国にはやって来るんだ。だから成年人口は多いし、その分税金もそれなりに納められているだ、と。さらに、30年前までは外国人と結婚するのは珍しかったけど、今、特にロンドンではいわゆるイギリス人同士の結婚の方が珍しいんじゃないかな、と。なるほどねぇー。
行く途中、ワイナリーの看板を発見。きけば、イギリスでの南部ではちらほらとワイナリーがあるそーだ。寒冷地ではブドウは育たないので、これも温暖化のひとつの表れらしく、そうきくとなんだか複雑な気持ちになる。
それにしても一対一の会話はラクだわ。今の私の英語力だと会話にばっちり参加できるには一対二が限界。これが英語が流暢でもネイティブじゃない人だったら、もっとスムーズなんだけどなぁ。なぜか、それはネイティブはネイティブならではの表現や言い回しがあって、知らないとぽっかーんってなっちゃうんだな。さらにエリアやその人独特のアクセントがあったりするので、ネイティブが多ければそのへんがカラフルになるので、余計に大変度が増すのです。あと、テレビ番組とかローカルなイベントとかが話題になるときっついねぇ。
ところでイギリスの流しの下の開きには、包丁を入れるスペースがありません。じゃあ、どこかっていうと、たいがい壁に専用の磁石をくっつけて、そこにぺたんを置くのです。外に出しておくことは物騒な気がするのですが、いちいち(これをいちいちと呼ぶべきかどうかは置いておいて)扉を開いて包丁を取り出して、よりはぐんとアクションは短くって済むんですけどね。
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さて、本日はカレーです。さすがインド(+パキスタン、バングラディッシュ、スリランカ)料理が定着しているだけありますね。でも家で作ったことがある人はいませんでした。以前、(一般に)食べることに関して保守的なイギリス人(彼らはスペインが大好きなのですが、イギリス人ツーリストの多いところではパブやフィッシュ&チップスなどカジュアルな飲食店が並び、スペインでもビールを飲んでフィッシュ&チップス食べてるというのは一種のジョークのように言われています)が、なぜ類似性がほとんどないと思われるインド料理が好きなのかを尋ねたことがあります。その人曰く、第二次世界大戦後、多くのインド人がイギリスに移住してきた、当然インド料理屋は増える、同時に人々の生活が忙しくなり、テイクアウェイもより活用するようになった。と、その時、インド料理は安かったのでたくさんの人が利用するようになった。そうして、もしかしたら最初は味ではなく安さで普及したのかもしれないけれど、やはり食べる機会が増えれば味覚も敏感になる。それで大衆性を得たのではないか、と。これは広東料理(香港からの移住者が多く、そのため広東料理が多い)も一緒だろう、と。
メニューは、Rogan josh/Lamb curry(ラムカレー)、Spiced basmati rice/Masaledar basmati(スパイシー・ライス)とSpinach with potatoed/Sag aloo(ほうれん草とジャガイモと付け合わせ)です。ほうれん草は火を通して使うのですが、鍋にたっぷりの水を入れてゆでたりしません。鍋にほうれん草をそのまま入れふたをし、弱火にかけます。ゆでるというより蒸すです。そうして水切り(といってもざるではなく、よくパスタの水切りをするアレです)にあけ、ポテトマッシャー(延べ棒に頭がついたようなタイプのもの)に似た道具でキュッキュッとプレスして水気をとります。どーです、随分違うでしょ。道具をたくさん使う感は否めませんが、なるべくラクに簡単にやりましょの精神がここにも宿っているように感じられます。
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本日のカレー、かなりスパイシーでした。クラスメイトたちはおいしいと言っていましたが、概してイギリス人は強い味が得意ではありません。味が強いことをsharpと表現しますが、まさに言い得て妙だなぁと感じます。甘いものは例外で、辛い、酸っぱいものは苦手なようです。今やカレーはイギリスの国民食のひとつですが、それはチキン・ティカ・マサラに代表されるマイルドなものが人気なように思えます。
午後は翌日のランチ用にTerrine d'Oranges(オレンジゼリー)と持ち帰りようにBread(パン)を作ります。ゼリーは、その方が扱いやすいからと板ゼラチンを使用。板ゼラチンをふやかすのに、計量カップにくるっと丸めて入れて(ちょうど板ゼラチンが計量カップの内側にきます)、水をひたひたに注ぐというのも賢いなぁと思いました。板ゼラチンそのものをベタにバットとかに入れるよりずっとラクだし、水量も少なくて済むし。
そしてパン作り。ここで、ワーーーンダフル、マーーーーベラス、ファーーーーーンタスティックなモノに出合いました。それはeasy bleand yeast(fast action yeastという名前でも売られています)。最初から材料に混ぜて使えるという、超!超!超!便利なものです。さすがに生地は発酵させますが(といってもオーブンの上においておいたり、日当たりのいい場所に放置しておくだけ)、イースト自体は発酵させる必要がありません。便利すぎます! すごいです! そういえばヴィクトリア・サンドイッチを作るときは、これまた便利なSRフラワー(セルフライジングフラワー。あらかじめふくらし粉が入った小麦粉)を使いました。なんて、なーんて便利なんでしょう! これらはイギリス独自のものかどうか分かりませんが、日本人とはまったく別の発想で合理的、効率のよさを追求していて、本当に本当に素晴らしい食材です。私のような大ざっぱな人間にはもってこいです。
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夕食を食べるころ、背中がぞくぞくっとしました。嫌な予感。風邪をひく前兆に思えたので、薬を飲んで寝ます。
by ricoricex | 2007-12-18 22:53 | 旅の記憶