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イギリスの食研究家、食のダイレクター/編集者/ライターの羽根則子がお届けする、イギリスの食(&α)に関するつれづれ。chattex アットマーク yahoo.co.jp


by ricoricex

2016: Space Oddity さようなら、デヴィッド・ボウイ


最初に断っておくと、私はデヴィッド・ボウイのファンでもなければ、特段思い入れがあるわけでもありません。
でもね、信じられないくらいのショックを受けちゃった。
それは、カート・コバーンが自ら命を断った(とされる)ときとも、ジョーイ・ラモーンやビースティー・ボーイズのMCAが亡くなったときともまったく違う性質のもの。

なんでだろう? なんでかな?

デヴィッド・ボウイが死去。2016年1月10日(月)に公表され、1月11日(火)に報道された模様。
18カ月のガンとの闘病の末、だそう。
新アルバムが発売された矢先のこと。


なんかちゃらいなぁ、キャラ作り込んでるなぁ。
これが私がデヴィッド・ボウイに抱いた第一印象。
まあ、私が初めて出会った彼は、MTVがどーんと打って出た1980年代で、そのなかで、いかにもな曲といかにもな映像で現れたのでした。

デヴィッド・ボウイの出で立ちは年代によって大きく変わり、これほど変化する人はほかにいないんじゃないかな。
私は1969年生まれで、音楽に心を奪われていったのは1980年に入って以降。
MTVが登場し、なんというのかなぁ、ポップミュージックが一般化し、次のステージとして大量消費されるようになり、そのためのPVが賑やかになった時代。
当時のメインストリームを走っていた音楽っつーのは、好むと好まざるとに関わらず、なんせ頻繁に見聞きするから、いいな〜と思うものもあったけれど、あまりにも商業化されたものは、ふう〜ん、って感じで、すぐにリアルにシンパシーを感じるインディー、もしくはもっと熱気を帯びていた前の時代の音楽にのめり込んでいったんです、私(フリッパーズ・ギターのふたりともろ同い年。だから彼らがやろうとしたこと、吸収してきたことはわかり過ぎるほどわかる)。

なわけで、1980年代のデヴィッド・ボウイは知ってるけど、特に可もなく不可もなく。これは今でも変わらない。Let’s danceなんて誰が何と言おうが、やっぱり私には駄作だもん。
でも、前述のように、後追いで1960〜70年代の音楽にふれるなかで、デヴィッド・ボウイも聞くと、これがものすごくいい!
『スペイス・オディティ』『世界を売った男』『ハンキー・ドリー』『ジギー・スターダスト』あたりが好きだな。
あとは、ティン・マシーン以降ソロに戻っての、1990年代以降も悪くない。


デヴィッド・ボウイの曲のなかで一番好きなのは、「Life on Mars」
(甲乙つけがたく、「Rebel Rebel」も好きだなぁ)。
 でもって、日本語タイトルの「火星の生活」というよりも「火星における生命体/火星に生命はあるのか?」なんじゃないのかなぁ。それが証拠に、Lifeは冠詞を伴わない)
映画『奇跡の海』に使われてて、これ楽曲単体で、というよりも、この映画の映像込みで好き。
厳密には、好き、というのとは違うかも知れないけれど、ある種の世界を垣間見たって感じ。

スコットランドの荒涼とした風景と、どこかこの世のものとは思えない彼の歌が、見事にシンクロしてて、胸にズシンとくる、わけもなく泣きたくなる。
なんかね、この世の果て、というよりも、この世とあの世の間って感じ。それが映像と音楽が見事にシンクロして、悲しいほどに美しいのよ。
(この映画、「火星での生活」のほかに1960〜70年代のおなじみの曲がたくさん使われてて、ラース・フォン・トリアー監督の目指す“神への献身と愛”(『ことの終わり』(原作はグレアム・グリーンの『情事の終り』)にしろ、ベルイマンにしろ、こういった観念性が前面に大きく出ると私、お手上げです。『奇跡の海』はバランスが非常によろしい)とかみ合うのかなぁと思っていたけれど、結果オーライでした。
特に「火星での生活」が流れる画面は、デヴィッド・ボウイの声と相まって、なんとまあ、胸が引き裂かれるほどの切ない美であることよ。)

でね、なんで彼の曲がこの映画にずばっとはまったかって、私なりに考えると、
デヴィッド・ボウイは地球人じゃないから。
だから、この世とほかの世界をつなぐもの、
ラース・フォン・トリアー監督のテーマの“神への献身と愛”と相性がいいんだと思う。


そうなのよ、私はデヴィッド・ボウイをこの世の人と思っていなかったのよ。
だから、彼の死にものすごいショックを受けたんだと思う。
ねえ、宇宙からやって来た人が死ぬなんて、誰が想像できる?

そりゃ、地球人同様、年齢を重ねるとともに老けていったよ。
そりゃ、デヴィッド・ボウイだったからきれいな老け方だったけどね。

彼が本名のデヴィッド・ロバート・ヘイワード=ジョーンズのままの一生だったら違ったかもしれないけれど、
デヴィッド・ボウイになった日から、さらにもっというとジギー・スターダストに扮した日から、彼は、宇宙からの地球に送られた使者という役割の人生だったんだよ、本人がいくら拒否しようとね。
(もっと現実的な言い方で言うと、彼がジギー・スターダストでついに大きく華開いた時期、デヴィッド・ボウイにものすごおおおく優秀なスタッフというかダイレクターというかスタイリストがついていたんだと思う。そこで与えられた役割を彼は正面から引き受けたことが、彼の一生を決定づけたんじゃないかな。そのイメージを葬るべく、その後スタイルを変化し続けたけれど、結局逃れられなかったんだと思う)
そんなキャラクターは、年はとることはイメージできても、死は想像だにできなかった。
だから、私はデヴィッド・ボウイの死にものすごおおおおくショックを受けたんだと思う。

かくして、地球に落ちてきた男、ジギー・スターダストはブラックスター★を残して、宇宙へ帰還したんだね。
彼の2016: Space Oddityは始まったばかりなのかもしれない。

Reaction to David Bowie's death (BBC)
http://www.bbc.com/news/live/entertainment-arts-35278886


David Bowie's life and career – in pictures
http://www.theguardian.com/music/gallery/2016/jan/11/david-bowies-life-and-career-in-pictures


David Bowie dies following battle with cancer
https://www.nme.com/news/music/david-bowie-165-1196261


David Bowie's 40 Greatest Songs - As Decided By NME And Friends
http://www.nme.com/photos/david-bowie-s-40-greatest-songs-as-decided-by-nme-and-friends/361814


David Bowie est mort à l'âge de 69 ans
http://www.lesinrocks.com/2016/01/11/musique/david-bowie-est-mort-a-lage-de-69-ans-11797091/



追記:4日前の今年2016年のデヴィッド・ボウイの誕生日、1月8日(金)はニューアルバム発売とともに、こんなニュースが入ってきました。
ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で開催されたボウイの大回顧展『David Bowie is』の日本開催が決定したとのこと。
会期は来年2017年春の予定。詳細は追って発表されるようです。
http://www.vam.ac.uk/content/articles/t/touring-exhibition-david-bowie-is/


~~過去の関連記事も併せてどうぞ
○デイヴィッド・ボウイを知る100冊 → http://ricorice.exblog.jp/21214409/


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by ricoricex | 2016-01-12 00:00 | 音楽