この3つの州はサウス・ミッドランズ、つまりイングランド南西部に位置し、
“ハート・オブ・イングランド”と呼ばれる。
肥沃な土地、イギリス一長い川、セヴァーン川がもたらす自然の恵み、
温暖な気候に恵まれた土地である。
豊かな大地は、オールド・グロスター種の牛の育成にうってつけだ。
この牛は、長い歴史を誇るこの土地のチーズ、
ダブル・グロスター・チーズの原料となる牛乳を作り出してきた。
余談だが、その昔、このチーズは、
レックレードからロンドンまでテムズ川を船で運ばれていたという。
1945年まで、グロスター・チーズにはダブルとシングルとがあった。
ダブル・グロスターは5月から9月にかけて作られるチーズで、
朝搾乳した牛乳をメインに、夕方搾乳したものを加えて作られる。
7〜12kgほどもある大型チーズで、熟成には何カ月も要する。
一方、シングル・グロスターは、
朝搾乳した乳か夕方搾った乳からクリームを取り除いたものが使われ、
大きさもダブル・グロスターに比べるとぐっと小さく、
重さにして4〜8kgと半分程度である。
シングル・グロスターは熟成を必要とせず、
つまりフレッシュなチーズのため、その場で食されていた。
シングル・グロスターは今では商業用のものは作られていない。
ダブル・グロスターは現在でもその人気は健在である。
とはいえ、原料の乳を作り出すオールド・グロスター種は今では稀少となっており、
ほかの牛の乳も使われる。
しかし、オールド・グロスター種以外の牛では脂肪分が充分とはいえず、
ダブル・グロスター独特のコクを生み出すのに苦心している。
また、ダブル・グロスターは、
味のみならず、とけやすく、料理に使いやすいという特徴もある。
(筆者注:原文と一般的な定義とでは異なる箇所が2カ所ある。
ひとつは、シングル・グロスターとダブル・グロスターの定義。
シングル・グロスターは無脂肪乳に少量の全乳を混ぜて作る、
ダブル・グロスターは全乳のみで作るとされる。
もうひとつは、シングル・グロスターは現在も一般流通されるものは作られている。)
(・・続 く・・)
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